特定技能「飲食料品製造業」とは?採用の流れや注意点を徹底解説

外国人が日本で働くためには、業種や職種に応じた「在留資格」が必要です。
その中でも、2019年に新たに導入された「特定技能」制度は、一定の技能や日本語力を持つ外国人が、人手不足が深刻な分野で就労することを目的としています。

本記事では、その特定技能のうち「飲食料品製造業」分野に注目し、制度の概要や対象となる業務、採用までの流れ、受け入れ時の注意点などを初心者にもわかりやすく解説します。「特定技能『飲食料品製造業』とは?」という疑問への理解を深め、制度の活用に向けた基礎知識を整理する内容です。

特定技能「飲食料品製造業」の概要

特定技能「飲食料品製造業」制度の背景

特定技能「飲食料品製造業」制度は、日本国内の食品業界における深刻な人手不足を背景に創設されました。
特に、HACCP(危害要因分析に基づく衛生管理)対応が義務化される中で、衛生管理の徹底や品質維持のために一定の知識と技能を持つ人材が求められています。

さらに、農業や漁業などの一次産業が加工・販売まで手がける「6次産業化」が進んだことで、食品加工の業務量が増加し、即戦力となる外国人材の活用が期待されています。こうした背景から、2019年4月に創設された特定技能制度の一環として「飲食料品製造業」分野での外国人材の受け入れが始まりました。2024年12月末時点では、特定技能「飲食料品製造」の在留外国人数は74,538人に達し、特定技能の分野の中でも最も多いです。

出典:特定技能制度運用状況 | 出入国在留管理庁

特定技能1号と2号の違い

特定技能には1号と2号という2種類の在留資格があります。
特定技能1号は在留期間が通算5年までと上限があり、基本的に家族の帯同はできません。
一方、特定技能2号は更新に上限がなく、家族帯同も可能で、長期的な在留や将来的な永住権取得も視野に入れられます。
技能水準においても違いがあり、1号では基本的な製造・加工業務と衛生管理が中心ですが、2号ではより高度な技能が求められ、他の従業員への指導や工程管理などの管理業務も担当できます。

また、外国人支援の面でも差があり、1号では支援計画の作成・実施が義務付けられていますが、2号では不要です。2023年には特定技能2号の対象分野が拡大され、飲食料品製造業も含まれるようになりました。
これにより、食品製造業界でも長期的な人材確保が可能になり、外国人材のキャリアパスも広がっています。

飲食料品製造業での特定技能外国人受入れの現状

飲食料品製造業の特定技能は、受入れ規模が特定技能分野の中で最も多いです。
当初は2019年の制度開始から「3万4000人」の受入れ計画でしたが、深刻な人手不足を背景に2022年には「8万7200人」へと大幅に拡大されました。さらに2024年4月からの5年間では13万9000人の受入れが見込まれており、今後も拡大傾向が続く見通しです。

出典:特定技能制度の受入れ見込数の再設定 | 出入国在留管理庁

飲食料品製造業で雇用可能な業務

対象業種

特定技能が従事できる対象となるのは日本標準産業分類における、以下の7分類に該当する事業所が対象でしたが、令和6以降から対象となる事業所が新たに追加されました。

出典:飲食料品製造業における外国人の受入れについて | 農林水産省

特定技能外国人が従事できるのは、主に製造現場での以下のような作業です。

  • ・原材料の計量、洗浄、切断、調合
  • ・加熱・冷却・乾燥などの加工処理
  • ・製品の検品、包装、梱包、ラベル貼付
  • ・作業場や機械の洗浄・衛生管理
  • ・製造工程における補助作業全般
  •  

また令和6年3月29日の閣議決定で、飲食料品製造業分野に特定技能外国人の受入れが認められる事業所を追加し、食料品スーパーマーケット及び総合スーパーマーケットの食品製造部門における業務が可能となりました。

これらの業務には、HACCPに対応した衛生管理や食品安全の知識が求められ、特定技能試験により一定の水準が確認されます。

業務における制限事項

特定技能「飲食料品製造業」で働く外国人には、いくつかの業務制限があります。

  • ・製造ラインの責任者や現場管理者などの「監督・マネジメント業務」
  • ・新商品開発や製造工程の設計などの「高度な専門技術を要する業務」
  • ・食品衛生責任者や品質管理部門などの「技術・専門職」領域

食品製造を主としない業態、例えばスーパーマーケットやショッピングモールの飲食テナント内での就労は原則として認められていません。また、従事できる業務は製造・加工工程に限定されており、接客や販売業務に携わることはできません。レジ打ちや店頭での商品説明など顧客と直接関わる業務は対象外です。

製造可能な製品にも制限があり、特に「酒類」と「塩」の製造は特定技能の対象外となっています。
これは酒税法や専売制度などの特殊な法規制が関係しているためです。
採用計画を立てる際は、業務内容が特定技能の範囲内であるかを事前に確認しておくことが大切です。

飲食料品製造業で外国人材を受け入れる要件

特定技能飲食料品製造業の受け入れ要件

1.対象業務に該当すること
食品の製造・加工・包装・検査・出荷など、飲食料品製造業分野で認められている業務であること。

2.HACCPに基づく衛生管理体制の整備
食品衛生法に沿ったHACCP対応を実施しており、外国人にも衛生管理に関する教育・指導を行う体制があること。

3.特定技能所属機関としての基準を満たしていること
法令順守、適切な雇用契約、外国人支援体制の整備など、特定技能制度全体の受け入れ要件を満たしていること。

4.「食品産業特定技能協議会」への加入
受け入れ企業は、分野別運用における協議会である「食品産業特定技能協議会」に加入し、協議会が定めるルールに従う必要があります。

特定技能所属機関の基準

特定技能制度では外国人材への適切な支援も求められるため、自社で支援計画を実施できない場合は「登録支援機関」の活用が必要となります。登録支援機関は出入国在留管理庁に登録された専門機関で、外国人材の生活支援から行政手続きまで幅広くサポートすることができます。

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受け入れ企業の義務

特定技能外国人の受け入れ機関として3つの条件を満たさなければいけません。

【①受け入れ機関の基準を満たしている】
特定技能外国人を受け入れるには、労働・社会保険などの法令を遵守し、過去に非自発的離職者や行方不明者を出していないなど、受け入れ機関として一定の基準を満たす必要があります。

【②雇用契約が適切である】
特定技能外国人の雇用契約は、在留資格の範囲内での業務であり、日本人と同等以上の報酬・待遇であることが求められます。差別のない公正な契約が必要です。

【③受入れ機関が支援を行う義務がある】
特定技能1号の外国人を受け入れるには、法務省指定の10項目の「義務的支援」を実施する必要があり、登録支援機関への委託も可能です。あわせて各種届出や申請、報告も求められます。

外国人側の特定技能要件

1号特定技能の取得要件

1号特定技能の資格を取得するには、主に2つの要件を満たす必要があります。
1つ目は「飲食料品製造業技能測定試験」に合格することです。この試験はOTAFFが運営し、食品安全や品質管理、衛生管理、製造工程管理、HACCPによる衛生管理、労働安全衛生に関する知識を問う学科試験と、判断力や計画立案能力を測る実技試験から構成されています。

2つ目は日本語能力の証明で、日本語能力試験N4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)でA2以上の成績が必要です。なお、技能実習2号を良好に修了した外国人の場合は、同じ飲食料品製造業分野であれば、これらの試験が免除されます。
※技能実習を「良好に修了」とは、技能実習計画を2年10ヶ月以上終えた状態を指します。

しかし、他分野の技能実習修了者は改めて試験を受ける必要があるため注意が必要です。

2号特定技能の取得要件

2号特定技能の取得条件は、1号の資格保持者が次のステップへ進むための重要な要件です。
まず基本条件として、特定技能1号の在留資格で通算3年以上の実務経験を有していることが必須となります。
さらに重要なのが、単なる製造現場での経験だけでなく、管理業務の経験が求められる点です。

具体的には製造ラインの監督や品質管理、生産計画の立案、新人指導などの責任ある業務を経験していることが必要です。
加えて、2号への移行には「飲食料品製造業特定技能評価試験(2号)」に合格することが求められます。
この試験では、より高度な業務遂行能力や管理能力が評価されます。2号資格取得の大きなメリットは、在留期間の制限がなくなり、家族の帯同も可能になる点にあります。

参照:飲食料品製造業分野 特定技能2号技能測定試験について | 農林水産省

飲食料品製造業技能測定試験​​内容の詳細

飲食料品製造業技能測定試験は、特定技能1号の資格取得に必須の試験です。
試験内容は主に2つの部分から構成されています。学科試験ではHACCPに基づく衛生管理や食品安全に関する基礎知識が問われ、実技試験では現場での実務能力が評価されます。

試験では特に食品衛生の重要性に焦点が当てられており、微生物制御や異物混入防止、適切な温度管理など、食品製造現場で必須となる衛生管理の知識が詳細に問われます。また、製造工程全般の知識や労働安全に関する出題も含まれます。

この試験は国内外で定期的に実施されており、海外では特定技能人材の送り出し国を中心に開催されています。
申し込みはOTAFFのウェブサイトから行え、合格すれば特定技能1号の申請に必要な証明書が発行されます。

特定技能外国人の採用フロー

採用までのステップ

特定技能外国人を採用する際には、国内・国外を問わず一定の手順に沿って進める必要があります。
まず採用プロセスの第一歩として、人材募集と面接(対面またはオンライン)を実施します。採用が決定したら、特定技能雇用契約を締結します。

特定技能1号の外国人を雇用する場合は、業務面だけでなく生活面でのサポートも必要です。
このため支援計画を策定しなければなりません。この際、登録支援機関を活用すれば効率的に進められます。

契約締結後は在留資格の申請手続きに入ります。
国外から招聘する場合は「在留資格認定証明書交付申請」、国内在住者は「在留資格変更許可申請」が必要です。どちらも1〜2ヶ月の審査期間を見込んでおきましょう。

国外からの場合は許可後、本人にビザ申請をしてもらいます。すべての手続きが完了してはじめて、外国人材の入国・就業が可能となります。

外国人雇用手続き完全ガイド

登録支援機関を利用した場合の支援内容

登録支援機関を利用すると、特定技能外国人材の受入れから定着までの幅広い支援を受けられます。
主な支援内容には、入国前の事前ガイダンスや入国時の空港出迎えから始まり、住居確保や生活立ち上げ支援まで含まれます。
外国人材が日本での生活にスムーズに適応できるよう、銀行口座開設や公共料金の支払い方法などの生活面のサポートも対応しています。

また、日本語学習支援や定期的な面談を通じて、言語面での不安解消や職場での悩み相談や、在留資格の更新などの行政手続き支援など様々な支援をしてもらうことができます。

飲食料品製造業での特定技能活用のポイント

メリット

特定技能制度の食品製造分野での最大のメリットは、即戦力となる外国人材の活用ができることです。
特に技能試験に合格した人材は、基本的な製造知識や衛生管理の理解がすでにあるため、短期間での戦力化が可能です。

また、少子高齢化による深刻な人手不足に悩む食品製造業において、特定技能外国人は国内人材だけでは対応しきれない業務を補完する重要な役割を果たします。深夜勤務や繁忙期の増員など、人員確保が難しい場面でも柔軟な対応が可能になります。

さらに、職場の多様性が高まることで、日本人従業員にとっても異文化交流や語学力向上の機会となり、職場全体の活性化にも繋がるきっかけになります。

注意点

特定技能の飲食料品製造業で外国人材を雇用する際には、言語や文化の違いによるコミュニケーション課題に注意が必要です。
特に現場での安全指示や衛生管理の徹底には、言葉の壁が大きな障害となることがあります。
このため、多言語マニュアルや通訳アプリの活用、ピクトグラムなどの視覚的指示ツールの導入が効果的です。

また、適切な支援体制の構築も不可欠です。
生活面でのサポートから行政手続き、健康管理まで、外国人材が安心して働ける環境を整えることが定着率向上につながります。
特に食品製造業では、宗教上の食事制限や文化的背景を理解し、尊重する姿勢も重要です。

自社だけでの対応が難しい場合は、登録支援機関を活用することで、専門的なサポートを受けられます。Stepjobでは、支援機関は行政手続きから生活支援まで幅広く対応し、雇用側と外国人材の双方にとって安心できる環境づくりをサポートしています。

Stepjobについて

Stepjobは、外国人人材紹介のほか外国人の生活周りにおける支援業務も行っております。
引っ越しサポートや、定期面談など入職後にも手厚くサポートしております。
内定が決まった求職者に対して、日本の生活編・仕事編についてStepjobから研修動画を提供します。

外国人の定着率は「95% 」(※内定後6ヶ月)なので、外国人採用に不安を感じている方や、外国人を採用しても定着率が低いとお悩みの方は、ぜひご相談ください。Stepjobの採用方法は「人材紹介」「スカウト」「掲載」の3種類あり、企業様に合わせて採用方法を選ぶことができます。

まとめ

今回は、特定技能「飲食料品製造業」の制度概要から実際の採用フローまで、人事担当者が必要とする情報を網羅的に解説しました。
特定技能1号と2号の違い、受入れ要件、そして技能測定試験の内容を理解することで、外国人材の採用がスムーズに進められます。

人手不足に悩む食品製造業において、特定技能外国人材の活用は有効な解決策です。
ただし、適切な支援体制の構築が成功の鍵となります。

 

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