日本で増えているネパール人。彼らの性格、働く際のエチケット、宗教について

採用ノウハウ

ネパールの基本情報

ネパールは北部にチベット自治区、南部にインドと接しており、北部の国境には世界最高峰として有名な「エベレスト」およびヒマラヤ山脈がそびえ立っています。首都カトマンズは高地に位置し、南部にはインドへと続く平野が広がります。ネパールの国土は北海道の約1.8倍の広さを持っています。2008年に王政が終わり、2015年に新憲法が施行され、連邦制を採用したネパールは、2020年に国名を「ネパール」に正式に変更しました。それまでの国名は「ネパール連邦民主共和国」でした。ネパールは、世界で唯一長方形でない形状の国旗を有する国としても知られています。

人口

2022年の時点で、ネパールの人口は約3000万人であり、世界の国々の中で人口ランキングは100位以下となっています。日本の人口は約1億2000万人と、減少傾向にあるものの、ネパールの約3000万人と比べるとはるかに多いです。この比較から、ネパールの人口の少なさがよくわかるでしょう。しかし、ネパールの人口構成は若年層が中心で、最も多い年齢層は20代となっています。労働可能年齢の人口が全体の60%以上を占めており、国の中央年齢は23歳と非常に若いです。さらに、高齢者の割合は10%未満となっており、これらのデータからネパールが労働力の多い若い国であることが伺えます。

 

隣国との関係

ネパールはインド、中国と接しています。インドとの関係は、経済、政治、文化、宗教の面で歴史的に深く、非常に緊密です。多くのネパール人がヒンドゥー教を信仰しており、これはインドからの移民の影響によるものです。両国間の移動にはパスポートや滞在許可が不要で、そのためインドには多くのネパール人が就労や生活のために滞在しています。一方、中国との関係は、近年特に強化されています。2017年には中国の「一帯一路」構想にネパールが参加し、「一つの中国」の原則にも賛同しています。これは、インドとの関係が過度に密接になるのを避け、中国とも良好な関係を築くための戦略です。ネパールは小さな国であり、力のある隣国であるインドと中国の間での関係のバランスを保つことを重視しています。

 

なぜネパール人は出稼ぎをするのか

ネパールには600万人を超える国民が国外で生活しています。多くの若い労働者は国内よりも海外での仕事を選びます。これは、ネパール国内で経済成長を後押しするような産業が育っていないことが大きな要因です。主な産業はサービス業と農業で、人口の約60%が農業や漁業に従事しています。過去の戦争や2015年の大地震の影響で観光業は低迷し、国の地形の高低差もインフラの発展を難しくしています。このような背景から、多くのネパール人が海外での仕事を探して移住しています。2019年度ネパールのGDPの約30%は海外からの送金によるもので、これが国に残る多くの家庭の生計を支えていることが伺えます。

湾岸諸国が大半を占めるものの、治安の問題などから日本での出稼ぎが増加

ネパールからの海外労働者は約600万人に上り、彼らの多くはマレーシア、カタール、サウジアラビアなどの国で働いています。実際はインドとネパールの間には自由に移動できる国境があり、そのため出稼ぎ者の正確な数に関する統計は存在せず、歴史的・地理的な背景から、インドがネパール人の主要な出稼ぎ先であると広く認識されています。図説ネパール経済2023|在ネパール日本国大使館によれば、日本へのネパール人出稼ぎ労働者の数はそれほど多くはないようです。しかし、湾岸諸国での労働に関連する事故や虐待の問題、日本の安全性や教育面、滞在資格の取得が可能かを考慮した結果、ネパール人が日本への移住をしてくる傾向が増えていることが伺えます。

 

ネパール人の特徴・性格

個人差はありますが、文化的な背景や国民性から、ネパール人は次のような特徴が見て取れます。

①仕事は熱心に働く

多くのネパール人が出稼ぎの目的として家族への送金を考えて日本で働いています。家族を尊重する彼らは、日本で多くの収入を得るために熱心に働きます。多くの人が月に5~10万円を家族に送金しているようです。もちろん、個人によって違いはありますが、彼らは一般的に不満をあまり口にしないと言われています。控えめで自己主張の少ない日本人との相性は良好であるといえるでしょう。

②家族を非常に大事にする

多くのアジアの国々と同様に、ネパール人も家族を非常に大事にしています。家族の誰かが病気になれば、仕事や学校を休んで看病するのは普通のことです。また、親戚間の絆も強く、家族が困難に直面すれば、お金を含む様々な方法で支援することを惜しみません。

③年配者を尊重する

ネパールでは「年配者を尊重する」という価値観が深く浸透しています。特に家族の中で、親の面倒を見ることは家族の責任とされています。多くのネパール人は家族と共に生活し、年配者を大事に扱います。日本も年上を尊重する文化を持っていますが、ネパールではこの価値観がそれ以上に重要視されています。

④時間にルーズ

多くの発展途上国と同様に、時間や期限の厳守という概念はネパールでも希薄です。発展途上国では、紛争、戦争、政治的な問題などにより、計画やスケジュールが突如変わることが多いのが一因です。これは悪気はありません。よって、ネパール人と共に仕事や学業を過ごす際には、「日本の文化では時間や計画を守ることが重視されている」ということを伝え、理解してもらうことが重要です。

 

ネパール人と宗教

ネパールの住民の大部分、約80%はヒンドゥー教を信仰しています。ヒンドゥー教は複数の神々を持つ宗教で、特にブラマー、ヴィシュヌ、ジヴァの三神が主要な存在とされています。信者たちは日常的に1日に1回程度、祈りを捧げます。なお、日常の服装に関する制限はありません。信仰に関連するいくつかのタブーが存在し、事前に理解しておくと良いでしょう。特に、次の点には注意が必要です。

食事

ヒンドゥー教には食事に関する特定の規則や慣習が存在します。断食も行われることがありますが、イスラム教の断食のように1カ月続くわけではなく、地域や習慣によって異なる方法があります。例えば、月に2回水を摂取しない断食や、満月・新月の日に行うものなどが挙げられます。ヒンドゥー教では、牛は神聖視されており、牛肉の摂取や殺生は禁止されています。これに加えて、牛肉の成分が含まれる加工食品や、ブイヨン、ラード、バター、ゼラチンなども避けられます。厳格なヒンドゥー教徒の中には、牛肉だけでなく、他の肉や魚、卵、五葷(ニンニク、ニラなど)も避ける人もいます。食事の制限が多いため、外食を控える傾向があり、食材の詳細が不明確な場合は慎重になります。ネパールの一般的な食事の習慣として、1日2食が主流です。そのため、昼食を摂らないことも珍しくありません。誰かを食事に誘う際は、相手の食事の制限やタイミングを確認することが大切です。信仰に基づく食事の慣習は尊重すべきものです。無理やり食べさせる行為は避けましょう。

左手

ネパールでは左手は「不浄の手」とみなされ、トイレの時に使います。そのため、手を使って食事をするときは右手を使うのが一般的です。ヒンドゥー教徒もお祈りするときに右手を使いますので、食事だけでなく他の場面でも右手が重視されます。

秋祭り「ダサイン」「ティハール」

9月下旬から10月にかけて、ネパールでは「ダサイン」という大きなヒンドゥー教のお祭りが15日間にわたって行われます。続いて10月末から11月初めには収穫祭「ティハール」も祝われます。ネパールの国民の大半(8割)がヒンドゥー教徒で、この時期は多くの人が故郷へ帰るため、帰省ラッシュとなります。特に「ダサイン」は、年に一度家族が集まり、親戚を訪れて年長者からの祝福を受ける大切な行事です。そのため、この時期にネパールからの一時帰国を希望する人が増えます。
■参考:ヒンドゥー教|国土交通省

 

ネパール人と日本語

ネパールは多様な民族が住んでおり、100以上の言語が話されていますが、実際にネパール語を母語として話す人は全体の半数程度です。このような多言語の背景が、彼らに語学への抵抗感を少なくし、学習への興味や意欲を高めています。また、多くのネパールの若者は英語を流暢に話します。これはインドとの関係の深さや、若い頃からの英語教育、さらに私立学校での英語による授業などが影響しています。また、英語能力は海外での仕事の際に重要なスキルとして扱われています。日本語に関していえば、ネパール語との文法や構造の類似性や、母音の数がネパール語よりも少ないため、ネパール人にとって学びやすいとされています。ネパールが親日的な国であることもあり、英語の次に人気のある外国語として多くの人々に学ばれています。

 

ネパール人との接触で気を付けるべきこと

他人が口を付けた食べもの

ヒンドゥー教の教えに基づき、ネパールでは他人が一度口をつけた食べ物や飲み物を共有することは避けられます。食べ物をシェアする文化は少なく、基本的に一人一皿のスタイルが主流です。水を飲む際には、直接口をつけずに水を注ぎ入れる方法で飲むことが一般的です。共同で食事をする際には、専用のトングやスプーンを用意して、使用済みの食器やカトラリーが他の食べ物や飲み物に触れないように注意するようにしましょう。

牛肉は食べられない

ヒンドゥー教の信者は、信仰の規則に従って牛肉を摂取することが禁じられています。最近では他の肉を食べるヒンドゥー教徒も増えてきていますが、牛肉やそれを含む製品は絶対に避けるべきです。人々に牛肉を食べるよう強要することは、非常に不適切であり、ハラスメントと見なされる可能性があります。ヒンドゥー教徒と一緒に食事をとる場合、食材やメニューの内容を確認し、適切な配慮をすることが重要です。

 

注目されるネパール

最近、日本に住むネパール人の数が増加しており、彼らは日本の労働市場で非常に価値のある存在となっています。日本の経済ニュースで賃金の上昇がないと話題になる中、経済的な格差のあるネパールから見れば、日本の給与は魅力的です。加えて、ネパール人の誠実な性格は日本の企業文化に適合しやすいと言われています。さらに、日本の良好な治安や語学の学習環境も、ネパール人が日本を選ぶ要因となっています。近い将来、私たち日本人の日常にネパール人が身近となっていくのではないでしょうか。そのような時には、今日話したネパールの文化や宗教、注意点を思い出し、相互の理解を深めることが大切です。

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