【2024年最新版】入管法改正案の変更ポイントは?わかりやすく解説
外国人を採用する際に知っておきたいのが、「出入国管理及び難民認定法(入管法)」です。
出入国管理及び難民認定法(入管法)とは、日本への外国人の入国、出国、在留に関する制度や手続きを定めた法律です。
この入管法が、2023年6月に改正されました。
今回は入管法改正のポイントや、改正に伴い特定技能・技能実習(新・育成就労)がどのように変化するのか詳しく解説していきます。
入管法改正のポイントと特定技能との関連をわかりやすく説明しておりますので、こちらも参考にして見てください。
出入国管理及び難民認定法(入管法)と2019年「特定技能」の創設と成果
まず、近年の入管法改正の最大のポイントは2019年度の在留資格「特定技能」の創設です。
日本の人口減少や労働力不足を補うために施行され、今年で6年目となります。
コロナ禍で2020年春から2022年春までの2年間、海外からの入国がほぼ止まりましたが、逆に出国も出来なくなったことから、
帰国困難の技能実習生や就職難の留学生が特定技能で就職が進みました。
結果として、2024年8月時点で262,769人まで増加しています。
分野別では業界ごとの特性や事情もあり、人数にも差があります。
まず、コロナ禍でも比較的業績好調であった飲食料品製造業が71,540人と最も多くなっています。
われわれが日々口にしている加工食品の多くは技能実習生や特定技能、留学生アルバイトたちの働きによって生産されています。
工場によっては、製造ラインの大半が外国人スタッフと言うケースもあり、いまや業界において欠かせない存在となっています。
2番目が素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業が44,626人。
製造業全般で労働力不足が長年の課題となっており、多くの企業が即戦力となる外国人労働者を必要としていることから、
製造業は外国人人材によって支えられているといっても良いでしょう
3番目は介護が39,011人。
特に介護は最初はあまり人気が無かったのですが、コロナ禍でも求人が安定しており、室内の安全な仕事で勤務シフトもきちんとしていることや、
日本語の上達にもつながるということで徐々に人気が上がり、他の分野から介護分野への転職が進みました。
当社ももともと医療介護分野を得意としていたこともあり、コロナ禍からかなりの人材を介護でマッチングしました。
介護分野は現時点では特定技能2号は設定されていませんが、実務未経験3年を経て介護福祉士の国家試験に合格すれば
日本でずっと働けることから、他分野から転職してくる人材は後を絶ちません。
4番目に多い建設の33,948人は技能実習生時代と同じ職場での移行が多くなっています。
建設は特定技能創設時から特定技能2号が認められていたこともあり、2024年8月時点で特定技能2号が112人と最も多くなっています。
まだまだ人数は少ないですが、技術の習得に時間のかかる建設は、技能実習生→特定技能1号→特定技能2号へと
時間をかけて育成していくのに適していると言えます。
5番目の農業に関しては、深刻な人手不足もあり、28,918人が活躍しています。
我々が日々口にしている野菜や果物の生産に多くの技能実習生、特定技能の外国人が関わっています。
6番目に多い外食業は22,826人。
コロナ禍で大打撃を受けましたが、この2年間でインバウンド需要の回復もあり、大きく伸ばしています。
留学生アルバイトからの就職も多く、外国人に人気の分野です。
この分野では以前は技人国ビザで就職するケースが少なからずありましたが、
入管は特定技能で置き換えできる分野、職種に関しては技人国ビザの審査を厳しくすると言われており、
今後は特定技能での採用が増えていくと思われます。
2023年改正のおさらいと2024年改正のポイント
2024年改正のポイントについて解説をしていく前に、
まず、2023年6月に成立・公布された改正入管法に関して軽くおさらいします。
2023年6月の主な改正ポイントは以下の通りであり、2024年から段階的に施行されます。
- ・特定技能の分野の拡大(特定技能1号の分野追加、特定技能2号の分野追加)
・難民認定手続きの見直し
・補完的保護対象者制度の創設
・監理措置制度の導入
特に人材採用においては、一点目の分野の拡大が大きなポイントです。
具体的には以下の4分野への特定技能の導入です。
- ・自動車運送業(陸送、バス、タクシー)
・鉄道分野
・林業
・木材産業
この中でも特に一つ目の運送業に関しては、陸送ドライバーの2025年問題や
インバウンド需要によるタクシー運転手不足、バス運転手の高齢化対策など、経済的にも効果も大いに期待されます。
2024年度から導入とされていますが、まだ詳細は公表されていません。
今後の動きに注目したいと思います。
特定技能 自動車運送業についても「特定技能1号 | 自動車運送業の受け入れ要件・雇用方法・注意点を解説」で詳しく解説しております。
また、これまで建設と造船にしか認められていなかった特定技能2号が、介護を除くすべての分野で導入が決まりました。
特定技能2号を「事実上の移民政策」と批判する声もあるようですが、技能実習生を導入している他の先進国、
たとえば韓国では人材不足の業界では技能実習生から就労ビザへの切替えを積極的に行っていますし、言葉の問題に関しても、
ドイツの介護分野ではドイツ語は来てから覚えればいいぐらいにおおらかに構えています。
建前を重んじ、過剰な日本語力を求めすぎる日本は「遅れている」と言えるでしょう。
特定技能の分野拡大により、企業は特定技能1号の在留期間の5年を超えて雇用継続することが出来ますし、
外国人人材にとっても、2号に移行できれば、家族滞在が可能となり、在留期間も更新し続けることで永住権への道も拓けます。
先に確認したデータの通りまだまだ2号の取得人数は少ないですが、
2019年の特定技能導入から本格的に増えたのは2021年以降なので、これから数年で特定技能2号への移行者は増えていくと思われます。
「特定技能1号と2号の違い」についても詳しく解説しておりますので、ご参照ください。
今後の改正法の概要とは?
これらの改正は、日本における外国人労働者の受け入れ体制を強化しつつ、人権問題への配慮も行われています。
特に、特定技能制度の拡大は労働力不足解消に寄与すると考えられています。
さらに、入管法は下記リンクの通り、2024年6月14日、第213回通常国会において改正案が成立し、同月21日に公布されました。
出典:改正法(令和6年法律第60号)の概要 | 出入国在留管理庁
「技能実習」を廃止し、代わりに「育成就労」を新設
特に重要な内容として、これまで国内外から批判されてきた「技能実習」を廃止し、
代わりに「育成就労」を新設するための改正が非常に大きなポイントとなります。
技能実習制度は1993年に導入され、コロナ禍前の2019年には過去最高の38万人程度が日本の労働力不足を支えていましたが、
本来の目的である「技術移転」とはかけ離れた実態や、劣悪な労働環境や違法な労働条件、人種差別的な扱いなどの問題もあり、
失踪者が後を絶ちません。
今回の改正では、技能実習生を育成就労と名を変え、条件付きで2年目から転職を認めるものです。
現行の技能実習生では3年は原則として転籍不可に対して、育成就労では日本語能力や技能要件を満たせば1年で可能とする案です。
育成就労は2027年までの導入を目指しているとされていますが、新制度にはメリット、デメリットも指摘されており、
施行までにはまだまだ調整解決しなければいけない課題が少なからずありそうです。
新制度の「育成就労」のメリット、デメリット
メリット
- ・2年目で条件付き転職を認めることで、技能実習生時代のミスマッチ解消や人材の流動化と活用促進
- ・劣悪な労働環境や違法な労働条件、差別的な扱いからの解放
- ・「特定技能0号」的な立ち位置で、事実上、特定技能と一体化することで、特定技能制度の強化
- →現状は技能実習生と特定技能の分野が完全に一致してないため移行に課題有り
デメリット
- ・技能実習生の監理団体と特定技能の登録支援機関の併存による連携面の課題
- ・地方の企業にとっては高いコストをかけて海外から招聘した技能実習生に2年で転職されるリスク
- ・地方の企業にとっては採用コストのみならず、経験や技術の蓄積ができない問題も
政府の有識者会議でも様々な意見が出て、これまで議論が重ねられてきました。
3年以内の導入としているので、今後の調整を経て、遅くとも2027年度中には導入されると思われます。
特に技能実習制度と特定技能制度の分野のミスマッチは早めに調整が図られると思います。
現状は技能実習生にはあって特定技能にはない職種・作業があるため、同分野での転職ができない場合があります。
ここは完全一致が望ましいでしょう。
日本の人口と外国人労働者の今後はどうなる?
これまで見てきたように、特定技能導入後の入管法改正は、人材不足に悩む各業界の要請に応じて、年次ごとに見直し・進化が図られています。
特に2019年の導入から5年経過の2023年から2024年に掛けては大改正の時期と言えます。
日本の人口動態と予測を見る限り、今後予定されている技能実習の廃止と育成就労の導入は、日本の人材不足解消のためだけでなく、
この国の将来を考えると進めるべきなのは多くの方々が認めるところです。
少子高齢化により、2023年の年間出生数(日本人)72.7万人に対して、直近の報道では2024年はついに70万人を割るという予測が出されています。
長期的には下図のように15~64歳の労働者人口の減少がさらに進むのは確実でしょう。
2066年には外国人が10人に1人?
さらに、あと40年ほどで日本の人口の10人に一人は外国人になると予測されています。
技能実習生の廃止と育成就労への移行に関して、海外の送り出し機関含めて様々な既得権益の問題もある一方で、
日本以外の先進国は技能実習制度をまだまだ継続することから、送り出し国や現地の人材にとって魅力が低下すれば、
日本の受入れ国としての地位が想定的に低下する懸念もあります。
日本が真の競争力を得るためには、外国人を単なる労働者としてではなく、
日本の将来を支える「人材」として育てていく取組みが各産業、各企業において不可欠な時代を迎えつつあるのは確かだと思います。
2019年のコロナの時期から2023年6月以降で、外国人にどのような動きがあったのかわかりやすいようにロードマップで表しています。
これを見てもわかる通り、2023年6月以降から特定技能の新分野の追加、特定技能2号の分野の追加、
技能実習から育成就労へ変更など外国人の需要が増えたことで、採用の幅が広がっていることが推測できます。
外国人採用で受入れ企業が注意すべきこと
在留資格更新の申請は早めに行うこと
外国人労働者を長期的に雇用する場合、在留資格の更新が必要です。
永住者を除き「在留期間」が定められており、日本での就労活動を継続するためには、「在留期間更新許可申請」を行う必要があります。
更新手続きは在留期限の3ヶ月前から可能です。
在留カードなどで期限を確認し、余裕をもって手続きを進めましょう。
助成金や補助金を活用する
外国人材を採用する際には、返済不要の「助成金」や「補助金」を活用できる場合があります。
- ・助成金: 厚生労働省が主に管轄しており、条件を満たせば基本的に受給可能です。
- ・補助金: 経済産業省が管轄するものが多く、審査を経て採択された場合にのみ受給できます。
どちらも利用できる場合がありますので、要件を確認し積極的に活用しましょう。
日本人と同等額以上の報酬を確保する
外国人労働者にも、日本人と同じく「同一労働同一賃金制度」や「最低賃金法」を守ることが求められます。
外国人だからといって賃金を低くすることは違法行為となり、発覚すれば不足分の支払いを求められます。
外国人労働者の待遇が日本人と比べて不平等にならないよう、慎重に確認しましょう。
「外国人雇用手続き完全ガイド | 注意点・入社前から入社後まで」の解説もしているので
ぜひチェックしてみてください。
まとめ
今回は、入管法改正のポイントや、改正に伴い特定技能・技能実習(新・育成就労)がどのように変化するのか詳しく解説しました。
日本の労働力不足への対応や国際情勢の変化に伴い、出入国管理及び難民認定法(入管法)は定期的に改正されています。
外国人採用を検討されている方は特にチェックしておくことをおすすめします。
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