【2024年】これからの宿泊観光業界どうなる?動向や現状、外国人材活用について
2024年に入り、訪日外国人旅行者数が過去最高に迫る勢いで推移する中、宿泊観光業界のインバウンド需要が再び活況を呈しています。
円安も追い風となり、日本は「物」から「体験」消費へシフトする観光地として注目を集めています。
しかし、この成長とともに業界全体で人手不足が深刻化し、特に宿泊・外食業界では外国人材の活用が急務となっています。
今回は、これからの宿泊観光業界はどうなるのか、動向や状況・外国人の活用について解説していきます。
インバウンドと宿泊観光業界
2024年度の訪日外国人旅行者数は9月までの累計で2,688万人、前年の年間累計2,506人を上回りました。
観光庁が公表している「訪日外国人および出国日本人」の統計データ(2003年~2023年、日本居住の外国人を除く)によると、
東日本大震災やコロナ禍などの自然災害による影響を除き、訪日外国人は大幅に増えています。
出国日本人数も徐々に増えているものの、近年では外国人旅行者の入国者数の増加が顕著となっています。
これは、特に東日本大震災からの復興期の政府による「インバウンド3000万人計画」という政策の結果であるとともに、
これまでの日本の観光地としてのPR不足や受入体制の課題を大幅に改善した官民一体の努力の成果とも言えるでしょう。
また、近年の円安傾向もあり、外国人観光客にとっては、日本は安くて楽しめる魅力的な観光地となっているだけでなく、
買い物や食事以外の新しい日本の魅力発見により、物の消費から「体験型の消費」にシフトしているとも言われています。
今後もこのような傾向は変わらず、日本は観光立国としての発展を遂げていくことでしょう。
出典:訪日外国人旅行者数・出国日本人数(2024年3月22日)| 観光庁
時系列で見ると、コロナ禍の影響でほぼ鎖国状態となったこともあり、2020年~2022年は大幅に減少していますが、2023年春から本格的に入国が再開されました。
さらに、2024年は途中までのデータになりますが、以下のような結果です。
- ・9月は287万人と、9月時点で前年の年間累計を上回り
- ・9月までの累計では2,688万人となり、前年の年間累計である2,506人を上回る
このままのペースで推移すると、2024年度は過去最高だったコロナ禍前の2019年度の3,188万人を上回ると思われます。
実際の宿泊者数の推移(観光庁:宿泊旅行統計調査)を見ても、コロナ明けのこの2年ほどで確実に外国人や日本人とも増えていますし、
コロナ前との比較においても、特に外国人の宿泊者数は大幅に増加しているのが分かります。
また、宿泊旅行統計調査を見てもわかるように、インバウンド観光客の回復はコロナ禍で大打撃を受けた宿泊観光業界や外食業界にとっては大きな恵みとなっています。
出典:宿泊旅行統計調査(2024年8月・第2次速報、2024年9月・第1次速報)| 観光庁
宿泊観光業・外食業における人手不足割合
一方で、宿泊観光業界および外食業の人手不足の状況については、
「帝国データバンクの人手不足に対する企業の動向調査(2023年10月)」によると、以下のような結果です。
正社員の人手不足割合業種別では「旅館・ホテル」が75.6%で最も高い結果でした。
当業種の企業からは、インバウンドなど観光需要が活況だったことによって人手不足も顕著に表れたことが見られます。
- ・「円安の影響で訪日客数が回復している」(東京都)
- ・「新型コロナが5類になり、人の動きが活発でリベンジ消費がみられる」(島根県)
- ・「秋の紅葉シーズンに入り、集客が多い」(岩手県) など
非正社員の人手不足割合、業種別では、「飲食店」が82.0%で唯一8割を上回った結果でした。
次いで、正社員では業種別でトップだった「旅館・ホテル」は73.5%と、非正社員でも2番目の高水準となっています。
また、「人材派遣・紹介」(64.2%)では人手不足の高まりによる需要増によって、派遣人材の不足が表面化しています。
ほか、小売・サービス業を中心に個人向け業種が上位に並んでいることから、
◎いずれの分野も正社員、非正社員ともに人手不足の割合が高い
◎コロナ禍で人材需要が一時的に減少したものの、コロナ収束 →インバウンド回復で再び人手不足へ
その一方で、
◎政府は2030年のインバウンド目標をこれまでの倍の6,000万人に設定
◎コロナ禍で人員削減を行った結果、他の業界に流れてしまっており、
人材の奪い合いが激化などもあり、人手不足がさらに深刻になりつつある
ということが言えます。
宿泊観光業界と外食業は似通った部分も多いため、本記事では合わせて比較を行っていきます。
宿泊観光業・外食業における企業側の採用意向
宿泊観光業や外食業では、ここまでご紹介した通り人手不足が深刻な問題となっています。
こうした状況の中、外国人労働者の手を借りることは人手不足を解消する助けとなるでしょう。
2019年に導入された特定技能制度により、これらの業界でも必要なスキルを持った外国人材を雇用しやすくなり、
宿泊観光業や外食業が求める即戦力の確保が可能となっています。
宿泊観光業および外食業の企業側の外国人の採用意向については、
「帝国データバンクの外国人労働者の雇用・採用に対する企業の動向調査(2024年3月)」よりまとめたデータがこちらです。
・外国人の雇用・採用について尋ねたところ、現在「雇用している」とした企業は 23.7%
・一方で、59.2%が「雇用していない」結果となり、6 割近くにのぼっている
・今後の採用についても尋ねたところ、現在外国人を雇用しており、かつさらに採用を拡大する企業は 4.5%と僅かにとどまった。
・現在は雇用していないが今後新たに採用する割合は 12.2%で、合計 16.7%が外国人労働者の採用を拡大する意向があることが分かった。
・業種別では「飲食店」が 44.0%でトップとなり、次いで「旅館・ホテル」(35.8%)、「人材派遣・紹介」(33.8%)が続いた。
・非正社員の人手不足割合を業種別にみると、「飲食店」が82.0%で唯一8割を上回った
・次いで、正社員では業種別でトップだった「旅館・ホテル」は73.5%と、非正社員でも2番目の高水準だった。
・「人材派遣・紹介」(64.2%)では人手不足の高まりによる需要増によって、派遣人材の不足が表面化している。
ほか、小売・サービス業を中心に個人向け業種が上位に並んだ。
上記のデータより、以下のことが考えられます。
- ◎外国人の雇用についてはまだ企業間の差があるものの、宿泊観光と外食業では採用意向が高まっている
- ◎特に政府のインバウンド目標6000万に対応するためには、外国人の活用が不可欠
宿泊観光業界と在留資格別の雇用状況
次に、宿泊観光業界における在留資格別の雇用状況を見ていきます。
「技人国」
いわゆる高度人材の職種に与えられる在留資格であり、宿泊観光業においては
フロントや通訳翻訳、企画・営業、事務、広報宣伝などの業務に従事させることができます。
ベッドメイクやレストランのホールなどは研修目的など以外は原則不可となり、専従させることはできません。
「特定技能(宿泊)」「特定技能(外食)」「特定技能「ビルクリーニング」
2019年から新設された在留資格で、特定技能「宿泊」は技人国と同じフロントなどの接客、通訳翻訳、企画・広報などの業務のほか、
技人国ではできないベッドメイクやレストランのホールなどにも専従させることができますし、特定技能「外食」であればキッチンで調理に専従もできます。
また、特定技能「ビルクリーニング」であればベッドメイクや清掃専従でも活用できます。
制限の多い技人国と異なり、このような使い分けにより、特定技能はほぼオールマイティと言えます。
ただし、特定技能「宿泊」でも、「風俗営業等の規則及び業務の適正化等に関する法律」第2条6項4号に規定する施設(ラブホテル等)において
就労させないこと及び同法第2条3項に規定する「接待」を行わせないことが求められているので注意が必要です。
「特定活動」
ワーキングホリデービザ(最長1年間)で来日する30歳以下の若者たちが主体です。
台湾や韓国からは人数も多く、サマーリゾートやウインターリゾートで活躍しています。
ワーホリは異国での体験を重視するため、そのまま就職するケースは少ないと言われますが、
当社ではワーホリから技人国や特定技能に移行を希望する候補者も扱っています。
「技能実習生」
宿泊業にも技能実習生がいますが、他の産業に比べて人数的には多くはありません。
技能実習生制度の見直しもあり、基本的には特定技能で事足りると考えています。
「資格外活動」
ほぼ留学生です。宿泊観光よりも外食業での活用が多くなります。
宿泊観光、外食ともに留学生に人気の業界、職種のため、そのまま技人国や特定技能で就職するケースも少なくありません。
留学生のアルバイトから仕込んでいくやり方もおススメです。当社も留学生のご紹介もできます。
「身分系の在留資格」
日本人の配偶者、永住者・定住者など、特別な在留資格で職種にほぼ制限なく働けますが、フルタイムではなくパートタイム勤務であったり、
配偶者の転職や転勤に伴い退職するケースもあり、安定的に雇用がしづらい面もあります。
また、それぞれの在留資格ごとに、働ける職場や職種、作業、採用条件などの制限があります。
在留資格別の雇用状況に関しては、資格外活動が114,018人と最も多く、次に身分系在留資格が53,355人、技人国が24,519人と続きます。
特定技能はまだ8,456人に留まります(理由は後述します)
宿泊観光業界団体の動き
盛り上げるインバウンドの一方で、深刻な人材不足を受けての業界団体の動きを見てみたいと思います。
業界団体の動きと試験実施方式の改善
先のデータで見た通り、昨年まで宿泊観光業界の外国人人材は「技人国」(技術・人文知識・国際業務)の
就労ビザの保有者が24,519人と特定技能よりも多く、現場の中心となっています。
「技人国」は本来はエンジニア、通訳・翻訳、企画、営業、事務などの高度人材の職種に与えられる在留資格であるため、
他の業界では2019年度から導入の新しい在留資格「特定技能」の活用が大幅に伸びています。
宿泊観光業界で「特定技能」の採用がなかなか進まなかった背景は、二点のことが考えられます。
①政府のインバウンド施策の影響もあってか、技人国のビザが取りやすかった- ②そもそもコロナ禍で宿泊客が大幅に減り、採用ができない状況
一点目は「なんちゃって技人国」と呼ばれ、本来ならフロントや通訳などの業務で採用すべき技人国を、
ベッドメイクやレストランのホールなどで使われている実態が問題として指摘されてきました。
しかしながら、入管庁は特定技能の導入拡大の一方で、技人国の審査を厳しくすると明言しています。
また、宿泊観光の業界団体である「全旅連」(全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会)や
「一般社団法人 宿泊業技能試験センター」など業界を挙げてのご努力もあり、
昨年までは年2回しか実施できなかった特定技能試験が、今年からPROMETRIC開催のCBT方式により、
海外での受験回数が大幅に増え、日本国内でも全国の会場で平日ほぼ毎日、試験が受けられるようになりました。
さらに、全旅連の青年部が主体となり、各地でマッチングイベントが開催されており、当社も参加させていただいています
(直近では2024年11月の箱根DMO様主催に参加予定)
このような動きにより、今後、宿泊の特定技能人材の採用(国内外の人材)が増えていくと期待されています。
詳細を知りたい方はこちらもあわせてご覧ください。
試験合格者数
次に、特定技能の試験の合格者数の推移を見てみましょう。
一般社団法人 宿泊業技能試験センターの公表データによると、
2024年4月からPROMETRICの会場試験が導入されたこともあり、確実に受験者数、合格者数ともに増えています。
特に政情不安で海外での就職を目指すミャンマーからの受験者数、合格者数の伸びが顕著なのは介護など他の分野と同じ傾向です。
合格率は国ごとの差はありますが、全体で8割程度と高めとなっています(日本は日本在住者)
ここでもミャンマー現地受験者が約9割と際立った成績を残しています。
ミャンマーは2024年春から徴兵制施行により若い男性は出国できなくなっていますが、代わりに20代の若く優秀で意欲溢れる女性が多数来日しています。
また、過去からの時系列でも、合格者数が着実に増えているのが分かります。
合格者が増えるほど、人材の候補者は増えていきます。
今後は特定技能人材の採用がチャンスと言えます。
宿泊観光業における外国人の活用方法
特定技能「宿泊・外食業」の状況に関して、これまで見てきた通り、インバウンド需要に対応するためには、技人国ではなく「特定技能」がカギとなるのは間違いありません。
現時点では外食業の方がコロナ明けからの取組みが早く、これまでの採用人数も多いですが、今後は宿泊観光でも採用が活発化していくことでしょう。
宿泊観光業における在留資格別のハイブリッド採用、特定技能の使い分け
ここで重要になるのは「使い分け」です。
たとえば、下図のように、宿泊施設内で主にフロント業務を技人国、その他を特定技能で使い分けもできます。
さらに、特定技能を細分化することで、業務に応じて使い分けることができます。
- ・特定技能「宿泊」:調理以外の業務をオールラウンドに対応
- ・特定技能「外食」:レストラン専従で調理
- ・特定技能「ビルクリーニング」:客室清掃やベッドメイキング専従
施設の規模や運営形態によっては、このようにそれぞれの業務に分けて採用を検討されることも1つの手段です。
部門ごとに細分化することで、業務の効率化につながるケースもあるかと思います。
以下の表で紹介している、いずれの在留資格も当社でご紹介できます。
在留資格にも、期限や受け入れ方などが異なっています。
【2024年版】外国人の介護人材を採用できる「4つの在留資格」を徹底比較
外国人採用をご検討されている方で、ご不明点があればお気軽にご相談ください。
まとめ
「【2024年】これからの宿泊観光業界どうなる?動向や現状、外国人材活用について」と題してまとめましたが、いかがでしたか?
AIやロボットなどの普及により、合理化できる部分もあるかと思いますが、接客サービス業においては、どうしても人手に頼らざるを得ないのが実態かと負います。
今後の宿泊観光業や外食業で、外国人を採用することは労働力不足を補うだけでなく、文化の多様性を職場にもたらし、外国人観光客へのサービスの向上にも貢献することが期待されます。
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