特定技能「建設」とは?制度概要から受け入れ条件まで完全解説
少子高齢化に伴う日本の人材不足の問題を解決するため、2019年4月より「特定技能」という新しい在留資格が新設されました。
人手不足に陥っている業種に限って活用が認められた資格ですが、人材不足の問題を抱えている建築業界でも受入が可能です。
この記事では、特定技能「建築」の対象となる業務や、取得するための要件、特定技能外国人を採用するポイントについて解説します。
特定技能「建設」のとは?
在留資格「特定技能」とは、生産性の向上や国内人材の確保のための取り組みを行っても、なお、人材の確保が困難な状況にある14の産業分野に限り、
一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人労働者の受け入れが可能です。
特定技能「建設」が創設された背景とは?
国土交通省の資料によると、建設業界の就業者数は1997年の685万人がピークとされ、2023年時点では483万人にまで減少しています。
また人手不足だけでなく高齢化も進んでおり、同じく2023年時点での状況は建設業就業者は55歳以上が3割以上、
逆に29歳以下は約1割という状況を抱えています。
こうした中で2019年に新しい在留資格の特定技能が創設され、12分野(当時)に建設業が含まれることになりました。
出典:建設業、不動産業界の最新動向、今後の展開 | 国土交通省
特定技能「建設」の現状と今後の展望
特定技能外国人の数は、2024年8月の速報値では建設分野で33,948人となっており、飲食料品製造業、工業製品製造業、
介護に次いで4番目に多く在留しています。
また、発表されている204年から今後5年間の特定技能受入見込数も80,000人となっており、これからまだ受入が見込まれる分野となっています。
特定技能「建設」の概要
建設分野の特定技能は、特定技能運用要領とは別に
『特定の分野に係る特定技能外国人の受け入れに関する運用要領-建設分野の基準について』運用要領があります。
特定技能運用要領=出入国在留管理庁が管轄で全分野共通の事項を記載、特定の分野=各省庁のルール(上乗せ基準)として定められてます。
建設分野は国土交通省が管轄になります。
双方の運営要領の中からポイントを絞って解説します。
特定技能「建設」の受入れ可能な職種
以前は業務区分が19区分と細分化されており、業務範囲が限定的でした。
そのため、建設業に係る作業の中で特定技能に含まれないものがあり、外国人技術者に任せることのできない業務がありました。
令和4年8月の閣議決定により、業務区分が3区分に統合され、業務範囲も拡大されました。
建設関係の技能実習職種を含む建設業に係る全ての作業が新区分に分類されたため、以前のように任せる業務に注意する必要がなくなりました。
業務区分の内容は以下の通りです。
<特定技能「建設」の3つの業務区分>
特定技能「建設」外国人の受入れ条件は?
主に建設分野での要件について解説します。
受入れ機関の要件
建設業許可の取得
受け入れ企業は、建設業法の許可を得ている必要があります。
建設キャリアアップシステムへの登録
建設業振興基金が運営する建設キャリアアップシステムへの事業者登録を行う必要があります。
計画書に建設キャリアアップシステム事業所番号(事業者ID)を 記載する必要があります。
一般社団法人建設技能人材機構(JAC)への加入
建設分野の特定技能を支援する業界団体である「建設技能人材機構」(Japan Association for Construction Human Resources。以下、JAC)に
加入する必要があります。
直接JACに正会員または賛助会員として入会するほか、JACの正会員となっている団体に加盟することでJAC加入手続きすることも可能となっています。
国土交通省による建設特定技能受入計画の認定
「特定技能」での外国人材を受け入れるに当たり、受け入れ企業は外国人に対する報酬額等を記載した「建設特定技能受入計画」について、
その内容が適当である旨の国土交通大臣の認定を受ける必要があります。
その際の主な審査基準は以下のとおりです。詳細はJACのサイトに掲載されています。
参照:建設特定技能受入計画の新規認定条件について | 一般社団法人建設技能人材機構
- 1.建設業許可を受けていること(建設業法第3条第1項の許可)
- 2.建設キャリアアップシステムにおいて事業者登録が完了していること(登録申請中では申請できません)
- 3.JACまたは当該法人を構成する建設業者団体に所属し、行動規範を遵守すること。(加盟申請中では申請できません)
- 4.申請前5年間に建設業法に基づく監督処分を受けていないこと
- また、申請日(認定日)以後に建設業法に基づく監督処分を受けていないこと
5.特定技能外国人と同じ職種での正社員の募集を行っていること(ハローワークでの人材募集を行っていること)
- 6.建設特定技能外国人の人数が、常勤の職員数を超えないこと
- 7.特定技能外国人の待遇を、無期雇用のフルタイム社員(いわゆる正社員)と同等もしくは同等以上の待遇とすること
- 8.特定技能外国人の受入後に、労働安全衛生法に基づく特別教育などの安全衛生教育を行うこと
- 9.特定技能外国人の受入後に、5年間の在留期間を見据えた技能の向上を図るように努めること
一般財団法人国際建設技能振興機構(FITS)の巡回指導への協力
一般財団法人国際建設技能振興機構(略称:FITS)は、建設分野をはじめとする技術・技能・知識を習得・実践しようとする各国の人材の受入、
育成等を適正に実施するため必要な支援等を行う団体として設立されました。
JACは本来JACが担うべき役割の一つである「適正就労監理」についてをFITSに委託していますが、FITSはJACからの委託を受けて、
企業への巡回指導、外国人との面談、母国語相談のホットラインの運営、特定技能人材受入後の講習実施を行います。
受入機関および登録支援機関はこのFITSの巡回訪問・調査指導に協力することが義務付けられています。
外国人求職者が特定技能「建設」の在留資格を取得するための要件
次に外国人求職者側の特定技能「建設」の在留資格取得の要件をみていきます。
特定技能「建設」1号を取得するには?
特定技能「建設」を取得するためには、他の分野の特定技能と同様に特定技能技能評価要件・日本語要件の両方をクリアする必要があり、それぞれの試験の合格が必要になります。
特定技能評価試験
建設業においては試験が3区分に分かれています。
試験内容は「学科」と「実技」に分かれており、以下の内容で行われます。
- ■学科試験
・問題数:30問
・試験時間:60分
- ・出題形式:真偽法(○×)および2~4択式
- ・実施方法:CBT方式
- ・合格基準:合計点の65%以上
- ■実技試験
・問題数:20問 - ・試験時間:40分
- ・実施方法:真偽法(○×)およ2~4択式
- ・実施方法:CBT方式
- ・合格基準:合計点の65%以上
日本語試験
日本語試験は2種類のうちどちらかに合格することが必要です。
- ・日本語能力試験(JLPT):N4以上に合格
- ・国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-basic):200点/250点以上
建設業分野の技能実習2号からの移行
外国人材が特定技能1号「建設」を取得するもう一つの方法は、「建設業分野の技能実習2号から移行する」というものです。
- 要件1:技能実習2号を良好に修了していること
- 要件2:技能実習の職種・作業内容と、特定技能1号の業務に関連性が認められること
要件2に該当しない場合は技能評価試験の合格が必須です。
また、技能実習2号からの移行の場合は、日本語の試験は免除されます。
技能実習から特定技能の移行についてはこちらの記事「技能実習から特定技能への移行は可能?注意点や手続きの流れを紹介」も参照ください。
採用までの流れ
特定技能建設を採用する場合、在留資格認定申請のほか国交省の受入計画の審査が必要になるのが大きな特徴です。
国交省の審査は在留資格の審査と同時並行で行うことができ、国交省の審査がおりる間は「特定技能1号」で就労予定の受入れ機関で就労しながら、
移行のための準備を行うことができる「特定活動(6か月)」への在留資格で活動することが可能です。
この場合特定活動の期間も特定技能の通算5年にカウントされます。
特定技能2号の取得方法について
特定技能2号は、特定技能1号よりもさらに習熟した技能をもつ外国人に対して許可される在留資格です。
当初は「建設」と「造船・舶用工業」の2分野のみ対象でしたが、2023年に11分野まで対象を拡大しました。
建設分野において特定技能2号の在留資格申請をするには、指定された試験に合格し、監督・指導者として一定の実務経験を満たしている必要があります。
1号とは違い、試験合格のルートしかありません。
建設分野では日本語試験の要件はありません。
要件1:技能評価試験に合格する
以下のいずれかの試験に合格することが要件です。
- ①建設分野特定技能2号評価試験(技能検定1級の水準に相当)
- ②技能検定1級
- 2号評価試験の内容は、上級の技能労働者が通常有すべき技能と知識を問うものとなっています。
- 1号同様、試験は「土木」、「建築」、「ライフライン・設備」の3つの区分に分かれていて、従事する業務の試験区分を受験することになります。
①の「建設分野特定技能2号評価試験」を受験する際は、
「建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者(班長)としての実務経験」が必要になります。
要件2:監督・指導者として一定の実務経験がある
特定技能2号は試験合格と併せて実務経験が必要です。実務経験を示すものとして証明書を提出します。
【実務経験】
- ・建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者(班長)としての実務経験がある
- ・実務経験として必要な就業日数を満たしているか否かについては、建設キャリアアップシステムに蓄積された就業日数(職長+班長)及び就業履歴数(職長+班長)で確認
※上記から、あらかじめ建設キャリアアップシステムに登録しておく必要があります。
ただし、2号特定技能外国人の業務区分に対応する建設キャリアアップシステムの能力評価基準のある
職種における能力評価でレベル3を取得している場合には、「能力評価(レベル判定)結果通知書」の写しの提出でも要件を満たせます。
特定技能「建設」のメリットと注意点
特定技能「建設」採用のメリットと注意点は以下のものが挙げられます。
採用のメリット
労働力不足の解消に繋がる
特定技能外国人を受け入れることは、人手不足が深刻化する企業が問題解決を進める有効的な手段です。
また、特定技能外国人によって労働力不足が解消されることで、日本人の労働者がより高度な業務に集中できるようになり、全体的な生産性の向上が見込まれます。
即戦力となる労働者の受け入れが期待できる
特定技能の在留資格を取得するには、相当程度の知識または経験が必要とされており、関連する技能試験の合格が必要です。
制度の特性上、受け入れする特定技能外国人は一定以上の特定技術や専門知識を持っており、即戦力として課題解決に繋がる有効的な手段と考えられます。
日常会話レベルの日本語能力がある人材を確保できる
特定技能を取得するには、技能試験合格のほかに、日本語能力試験のN4(日常レベルの文章理解やゆっくりなら会話が理解できるレベル)の合格が必須です。
初歩的な日本語を教育する必要がなく、ある程度はコミュニケーションを取れる人材を確保できます。
採用時の注意点
義務的支援を行わなければならない
特定技能外国人を受け入れする企業は、特定技能外国人が日本で充実した生活を送るために、10の義務的支援が定められています。
特定技能制度の複雑な手続き
特定技能制度は技能実習制度ほど複雑ではありませんが、適切な候補者の選定や在留資格の手続き、住居の確保といった複雑な要素を含んでいます。
受け入れ前には、面接や雇用契約締結、事前ガイダンスなどの実施が必要です。
また、受け入れ後にも、義務的支援や在留資格更新手続きなどの義務が発生し、多くの手間と複雑な制度に対応するノウハウが必要です。
特定技能外国人を集めにくい
日本語試験や技能試験に合格した人材というハードルがあるため、特定技能の資格を持つ外国人の数には限りがあります。
また海外で募集することも想定されるため、なかなか自社で特定技能外国人を集めにくいというデメリットもあります。
転職されてしまう可能性がある
技能実習とは異なり、特定技能は転職が可能です。
ただし、他分野への転職には試験合格が必要だったり、転職時に新しい所属機関への在留資格変更申請が必要なため、
一般的に日本人に比べると転職のハードルが高いと言えます。
登録支援機関に委託するとスムーズ
特定技能制度は技能実習制度と異なり、自社で外国人の支援体制が整っていれば登録支援機関に依頼する必要はありませんが、
小規模な企業や特定技能を初めて採用する企業にとっては大きな負担になる可能性があります。
人材募集や支援のノウハウを持つ登録支援機関に人材募集から入職前後の支援まで委託するのがスムーズです。
まとめ
特定技能「建設」を雇用する際の手順・注意事項を中心にまとめました。
本稿に記載したとおり、特定技能のなかでも建設分野は独自の要件があり、手続きが複雑です。
特に外国人を初めて採用する場合は、外国人に特化した人材会社を利用することをおすすめします。
Stepjobでは、初めて外国人を受け入れる企業様でも安心していただけるよう、人材紹介をはじめ、
ビザ申請サポートや生活支援、助成金・補助金 自動システム、研修コンテンツ動画など様々なサポートをご用意しております。
また、Stepjobの採用方法は「人材紹介」「スカウト」「掲載」の3種類あり、企業様に合わせて採用方法を選ぶことができます。
外国人の採用を検討されている方や、お困りの方はぜひご相談ください。