特定技能1号 | 自動車運送業の受け入れ要件・雇用方法・注意点を解説

特定技能

2019年に創設された在留資格「特定技能」は、2024年3月の閣議決定で、自動車運送業を含む4分野が特定技能に追加になりました。
自動車運送業界は2024年問題やドライバーの高齢化を背景に人手不足が顕著な業界となっています。
外国人採用が人手不足の解決策としてなりうるのか、新しく決まった特定技能の概要だけでなく、その他の在留資格についても解説していきます。

 ドライバーの人手不足

自動車運送業界の2024年問題

物流・運送業界の「2024年問題」とは、働き方改革法案によりドライバーの労働時間に上限が課されることで生じる問題の総称のことです。
具体的には、ドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されることで、
一人当たりの走行距離が短くなり、長距離でモノが運べなくなると懸念されています。
さらに、物流・運送業界の売上減少、トラックドライバーの収入の減少なども考えられると言われています。

 特定技能「自動車運送業」

自動車運送業界の人手不足を解消するため、外国人ドライバーを雇用できる手段ができました。
特定技能1号に追加された自動車運送業については、トラック、バス、タクシーの3区分にわかれています。

それぞれどのような業務が可能なのかは出入国在留管理庁の運用要領により下記のとおり定められています。
また2023年からの5年間での導入見込が23,000人となっており、これから採用人数が増加していくことが見込まれます。

トラック運送業

トラック運送業は、運行管理者等の指導・監督の下、貨物自動車運送事業における
運行前後の点検、安全な運行、乗務記録の作成や荷崩れを起こさない貨物の積付けなどの仕事ができます。

タクシー運送業

タクシー運送業は、運行管理者等の指導・監督の下、一般乗用旅客自動車運送事業における運行前後の点検、
安全な運行、乗務記録の作成や乗客対応などの仕事ができます。

バス運送業

バス運送業は、運行管理者等の指導・監督の下、一般乗合旅客自動車運送事業、一般貸切旅客自動車運送事業
または、特定旅客自動車運送事業における運行前後の点検、安全な運行、乗務記録の作成や乗客対応などの仕事ができます。

特定技能とは?

最近では、特定技能外国人が25万人(※2024年6月末時点)を超えており急増しています。
そもそも特定技能とは、即戦力となる外国人の就労を目的とした在留資格です。
特定技能は1号と2号があり、1号の在留期間の上限は通算5年ですが、2号は在留期間の上限はありません。

特定技能の自動車運送業は、1号に追加されたばかりなので2号は認められておりませんが、今後2号に追加されることに期待できるでしょう。
「特定技能1号と2号の違い」について詳しく知りたい方はこちら

自動車運送業で特定技能を受け入れる要件

特定技能については、受け入れる「所属機関(企業)」と「外国人本人」に要件があり、
それぞれ「各分野共通の要件」と追加して、分野特有の「上乗せ要件」がそれぞれあります。

一般的な特定技能の採用方法についてはこちらの記事も参照ください。

特定技能の各分野共通の要件

特定技能の各分野で共通している「所属機関(企業)」と「外国人本人」の要件は、以下の通りです。

 所属機関(企業)の要件

    1.   1.機関自体が適切 であること
         (例:5年以内に労働関連法・出入国管理法等関係法令の法令違反がない)
    2.   2.外国人と結ぶ雇用契約が適切であること
    3.    (例:報酬額が日本人と同等以上)
    4.   3.外国人を支援する体制・支援契約が適切であること
         (例:外国人が理解できる言語で支援できる)

特定技能外国人に対する支援については、必ず行わなければならない義務的支援と任意的支援がありますが、
これらの支援等に関しては登録支援機関に委託することにより条件を満たすことは可能です。

 外国人本人の要件

  1.   1.18歳以上であること(※)
        (※)第一種運転免許取得の年齢要件は中型20歳以上、大型21歳以上。 外免切替(後述)の場合も同様であるため注意。
  2.   2.健康状態が良好であること
  3.   3.技能試験および日本語試験(N4相当)に合格していること
       (技能実習2号を良好に修了した外国人は免除)

 

自動車運送業界の上乗せ要件

 所属機関(企業)の要件

    1.   1.道路運送法に規定する自動車運送事業を経営するものであること
    2.   2.運転者職場環境良好度認定制度または貨物自動車運送事業案税制評価の認証をうける
    3.   3.自動車運送分野の特定技能協議会の構成員になること
          特定技能制度の適切な運用を図るために各分野で設置されている機関になります。
          内定後在留資格認定申請をする前に加入しておく必要があります。
    4.     更に採用後の義務として新任運転者研修を実施しなければなりません。

 外国人本人の要件

外国人本人に関する要件については、各区分の技能試験のほか運転免許が必要になること、
日本語能力も区分によってはN3以上と高いレベルの水準が求められます。

  1.運転免許
   トラックは第一種運転免許、タクシー・バスに関しては第二種運転免許が必要になります。
   運転免許未取得者については、免許取得に時間がかかることからまず特定活動の在留資格を申請して、
   6か月(トラック)または1年(タクシー・バス)の間に運転免許取得をすることが可能です。
   海外からの求職者については、事前に外国の運転免許等を取得している必要があり、
   入国後外免切替等により日本の第一種・第二種運転免許を取得します。

      1.   2.特定技能評価試験
           トラック・タクシー・バスの各区分ごとの試験が設定されることが発表されています。
           特定技能「自動車運送業」1号技能評価試験の実施時期については2024年10月1日現在、
           評価試験の内容、開催時期などはまだ明らかにされていません。
           過去の例に倣って、恐らくまずは日本で試験を開始し、徐々に二国間協定を結んでいる国で試験開催が広がっていくと思われます。
  1.   3.日本語能力試験
       特定技能については、他の分野ではN4相当レベル以上の日本語力が求められますが、
  2.    特定技能「自動車運送業」のタクシー・バスの区分に関しては
  3.    JLPT(日本語能力試験)N3以上と定められており、一定程度のコミュニケーション能力が求められます。

外国人ドライバーを雇用する方法

運送業界で採用できる在留資格

運送業界では新たに導入が決まった特定技能のほかにも、
永住者や定住者など身分系のビザ等で働いている方は多く次の在留資格で採用することが可能です。 

特定技能以外の在留資格に関しては、以前より採用事例はあったものの母数が少なく、計画的な採用を進めるには難しいことが難点でした。
以下に在留資格の特徴を記します。

 特定技能自動車運送業を雇用する流れ

自動車運送業において、特定技能人材を採用するパターンは、大きく以下の3つに分かれます。

  1.   1.国内の人材・日本の運転免許あり
  2.   2.国内の人材・外国の免許のみ
  3.   3.海外の人材・外国の免許のみ

採用プロセスは、次表のような流れ になります。
採用検討~内定まではその他分野の特定技能と同じ流れになりますが、
運転免許がない場合は、まず「特定活動」ビザ(トラック最長6か月、タクシー・バス同1年)に変更し、
その間に免許を取得するか外免切替の手続きを行う措置があるのが特徴です。

※出典元:公益社団法人 全日本トラック協会「自動車運送業分野 トラック区分における特定技能外国人受け入れの手引き」
(図はトラックの場合。タクシー・バスの場合、特定活動ビザの期間は最長1年に読み替え)

特定活動46号自動車運送業における「特定活動46号」とは?

特定活動(46号・本邦大学卒業者)」は2019年5月に新設された比較的新しい在留資格で、
日本の大学等と卒業した高い日本語能力を持つ人が留学生としての経験を通じて得た高い日本語能力を活用することを要件として、
幅広い業務に従事する活動を認めるものです。

「技術・人文知識・国際業務(技人国)」は、
一般的なサービス業務や製造業務等が主たる活動となるものは認められませんが、同在留資格は可能となります。
具体的には、飲食業での接客・管理業務、ホテルでの接客・管理業務、工場での技能実習生等への指導といった業務で認められていますが、
インバウンド対応のタクシードライバーも含まれます。

ただし、本人の条件がかなり厳しく、次のような条件が求められているため、技人国より取得が難しいと言われています。

  •   ・日本の大学等を卒業している(専門学校の場合は高度専門士を修了)
  •   ・高い日本語力を有している(日本語能力検定N1orBJTビジネス日本語力テスト480点以上、大学又は大学院において「日本語」専攻)

   また転職する際には、技人国ビザと違って「在留資格変更許可申請」が必要となることも本人にとっては
   デメリットと感じられるため採用が難しい一因となっているかもしれません。
  ・身分系ビザ(永住者、定住者、永住者等の配偶者)・家族滞在ビザ・留学ビザ

いずれも就労ビザではなく自身の身分等によるビザとなり、身分系のビザは就労制限はあまりありませんが、
家族滞在ビザや留学ビザなどは「資格外活動」の許可取得が条件となり週28時間の就労制限があります。

就労を目的としたビザではないため、居住地の近くなど勤務地や働く時間に制限がある場合があり、採用時には注意が必要です。

外国免許の切り替え

自動車運送業界で特定技能となるためには運転免許が必要となるため、
海外人材の採用の場合、いわゆる「外免切替」が有効な手段となります。

外免切替の要件は以下の通りです。

外免切替の要件

  1.   ・外国等で運転免許を取得後、その国に通算3か月以上滞在
  2.   ・外免切替完了日まで有効な運転免許証を持って来日

外免切替の手続き方法

  •   ・必要書類等を準備(外国の運転免許の翻訳証明書等必要)
  •   ・事前審査のうえ申請受付
  •   ・適性試験、知識確認合格のうえ技能確認の予約
  •   ・外国の運転免許期間内に技能確認合格→運転免許証交付

手続きの順序については、警視庁または各都道府県の警察署の外免切替のページをご参照ください。

出典:大阪府警HP・外免切替について

特定技能自動車運送業を受け入れる際の注意点

所属機関(企業)の要件について

自動車運送業界で事業展開している企業では当然整備されている内容ですが、検討時に確認ください。
また外国人を支援する体制・支援計画作成については登録支援機関に相談されると良いでしょう。

外国人本人の要件について

自動車運送業の上乗せ要件として、運転免許の取得とタクシー・バスの区分については
日本語能力JLPT・N3が求められている点が他の分野と異なります。

運転免許の取得について

日本の運転免許がない場合は、特定活動ビザ(トラック6か月、タクシー・バス1年)の申請が認められており、
運転以外の業務をしながら免許取得が可能です。
また外国の運転免許証を持っている場合は、外免切替の手続きも可能です。

まとめ

自動車運送業界での外国人採用について、特定技能に新たに追加された「自動車運送業」の概要を中心に解説しました。
まだ未発表の情報も多いですが、恐らく2024年度中には技能評価試験が開催されるなど、制度開始に向けての動きが出てくると思われます。
Stepjobでは特定技能への在留資格変更希望者や、身分系のビザで既に免許をお持ちでドライバー希望の方を募集することが可能です。
外国人ドライバーの採用について是非お問合せください。

 

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