特定技能の「フィルム加工」とは?対象業務・受入れ可能な事業所・要件を解説

特定技能

食品・日用品の包装材や工業用フィルムを手がけるフィルム加工の現場では、ラミネート、スリット、製袋といった工程を担う人材の確保が課題です。2026年1月23日の閣議決定(分野別運用方針の改正)により、特定技能「工業製品製造業分野」で外国人が従事できる業務に「フィルム加工(ドライラミネート、押出ラミネート、スリット、製袋、フラットヤーン)」が追加され、2026年6月1日の経済産業省改正告示の施行以降、受入れの対象となっています。

本記事では、「フィルム加工」という業務と、「プラスチックフィルム製造業」などの産業分類(業種)の関係を整理したうえで、対象となる事業所と業務、特定技能1号・2号の違い、試験要件、採用の進め方を、出入国在留管理庁・経済産業省・JAIM(一般社団法人工業製品製造技能人材機構)の公的資料に基づいて解説します。

フィルム加工が特定技能に追加された背景

フィルム加工の現場では、深夜・早朝を含む勤務や、樹脂の溶融にともなう高温・臭いが発生する作業環境が敬遠され、若年層を中心に人手不足が続いているとされています。こうした事情を踏まえ、フィルム加工は、新しい業務区分としてではなく、既存の業務区分「機械金属加工」「電気電子機器組立て」の「従事する業務」に追加されました。主な経緯は次のとおりです。

時期内容
2024年3月29日閣議決定で工業製品製造業分野の対象を拡大(1号の業務区分は3区分→10区分)。プラスチック製品製造業(中分類18)も受入れ対象の産業分類に追加(プラスチック製品製造業に係る告示改正は2024年9月30日)
2026年1月23日特定技能制度の分野別運用方針を閣議決定。1号の業務区分を17区分に拡大し、「機械金属加工」「電気電子機器組立て」の従事する業務にフィルム加工を追加
2026年5月8日経済産業省の改正告示を公布
2026年6月1日改正告示を施行。1号は17業務区分・76産業分類、2号は3業務区分・46産業分類が対象に
2026年6月25日運用要領(工業製品製造業分野の基準)を一部改正

特定技能「工業製品製造業分野」とは

特定技能は、生産性向上や国内人材の確保に取り組んでもなお人材確保が困難な産業分野を対象に、一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れるための在留資格です。かつて「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」と呼ばれていた区分は、業種拡大にともない「工業製品製造業分野」に名称が変更されています。

受入れ人数の上限と対象の拡大

工業製品製造業分野の特定技能1号の受入れ人数は、2024年3月の閣議決定で49,750人から173,300人(2024〜2028年度の受入れ見込数)へ再設定されました。その後、2026年1月の閣議決定を経て、経済産業省の資料(2026年6月)では199,500人(2024年4月〜2029年3月の5年間の受入れ人数上限)とされています。2号には人数の上限がありません。また、2026年6月1日以降、1号の対象は17業務区分・76産業分類へ拡大しました。

※199,500人は工業製品製造業分野全体の1号の受入れ人数上限であり、フィルム加工やプラスチック製品製造業単独の人数ではありません。
出典:経済産業省「工業製品製造業分野における特定技能外国人材の受入れについて」(2026年6月)

「産業分類(業種)」と「業務」は別の軸で確認する

特定技能の受入れ可否は、①外国人が働く事業所が受入れ対象の日本標準産業分類に該当するか(業種の軸)、②外国人が従事する業務が対象の業務区分に該当するか(業務の軸)、の両面から判断します。「プラスチックフィルム製造業」は①の産業分類の名称、「フィルム加工」は②の業務の名称であり、そもそも分類の方向性が異なります。

確認の軸何で判断するかフィルム加工の場合
業種(産業分類)外国人が働く事業所で、直近1年間に受入れ対象の日本標準産業分類の製造品出荷額等が発生しているか主に中分類18「プラスチック製品製造業」(1821プラスチックフィルム製造業、1825プラスチックフィルム・シート・床材・合成皮革加工業など)
業務(業務区分・従事する業務)外国人が主として行う作業が、業務区分ごとに定められた「従事する業務」に該当するか業務区分「機械金属加工」または「電気電子機器組立て」の従事する業務「フィルム加工(ドライラミネート、押出ラミネート、スリット、製袋、フラットヤーン)」

業務の側は「分野(工業製品製造業分野)>業務区分(機械金属加工など17区分)>従事する業務(フィルム加工など)」という階層になっており、「フィルム加工」という業務区分があるわけではありません。また、事業所の産業分類と業務区分には想定される組合せがあり、経済産業省・JAIMが公表している「特定技能外国人が活動を行う事業所が行う産業の分類と従事する業務区分で想定する組合せ」で確認できます。

受入れ対象となる事業所(産業分類)

受入れ可否は、法人全体ではなく、外国人が実際に働く事業所単位で確認します。
主たる事業でなくても、受入れ対象の産業分類に該当する製造品の出荷額等(加工賃収入額を含む)が直近1年間に発生していれば、対象になり得ます。フィルム加工を行う事業所が該当することが多いのは中分類18「プラスチック製品製造業」で、中分類18は1号・2号とも受入れ対象の産業分類に含まれています。中分類18には、たとえば次のような細分類があります。

・1821 プラスチックフィルム製造業(樹脂からの製膜、製膜したフィルムでの製袋など)
・1822 プラスチックシート製造業
・1825 プラスチックフィルム・シート・床材・合成皮革加工業(購入したフィルムのラミネート、スリット、製袋などの加工)
・プラスチック板・棒製造業、プラスチック管製造業、プラスチック継手製造業
・プラスチック床材製造業、合成皮革製造業
・軟質・硬質プラスチック発泡製品製造業
・強化プラスチック製品製造業
・各種プラスチック製品加工業 など

特に注意したいのは、フィルム加工を主に行う事業所の分類です。
JAIMのFAQでは、主としてプラスチックフィルム・シート等を元に各種加工(ラミネート加工など)を行っている場合は1825に該当するとされています。樹脂から自社でフィルムを製膜している場合は1821、購入したフィルムで製袋している場合は1825に分類されるのが一般的です。一方、購入した紙にプラスチックを積層してラミネート紙を製造する場合は1431塗工紙製造業に、グラビア印刷が主体の場合は15印刷・同関連業に分類される可能性があります。中分類18以外に分類される場合は想定される業務区分との組合せも変わるため、原材料・工程・主要製品を整理したうえで、最終的にはJAIMに確認してください(製造品が対象の産業分類に該当するかはJAIMが判断します)。

参考:日本標準産業分類(令和5年7月改定)分類項目名、説明及び内容例示|総務省/製造業における特定技能外国人材受入れに関するFAQ|JAIM

特定技能外国人が従事できる業務

フィルム加工に含まれる5つの業務

フィルム加工として従事できるのは、次の5つの業務です。
求人票や雇用契約書、支援計画に記載する業務名は、JAIM・経済産業省の資料の表記(「フィルム加工(ドライラミネート)」など)に合わせておくと安全です。

従事する業務作業の概要(例)
ドライラミネート接着剤を塗布・乾燥させ、フィルム同士やフィルムとアルミ箔・紙などを貼り合わせる
押出ラミネート溶融した樹脂を押し出して基材に積層し、コーティングや貼り合わせを行う
スリット原反(幅広のロール)を所定の幅に裁断して巻き取る
製袋フィルムを熱シール・裁断して袋状に加工する
フラットヤーンフィルムを細幅に裁断・延伸してテープ状の糸をつくる(フレキシブルコンテナバッグや土のう袋などの原料)

同じ業務区分には、プラスチック関連の業務として圧縮成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、手積み積層成形、ビーズ法発泡スチロール成形、プラスチック成形材料製造も含まれます。一方、Tダイ押出やカレンダー成形によるフィルム・シートの製膜は、従事する業務に同名の業務が掲げられていません。1821の事業所であっても、外国人に主として担当させる工程が従事する業務のいずれかに該当するか、事前にJAIMへ確認することをおすすめします。

付随的に従事できる関連業務

特定技能外国人は、同じ業務に従事する日本人が通常従事する関連業務に、付随的に従事することができます。
運用要領では、原材料・部品の調達・搬送作業、各業務の前後工程作業、クレーン・フォークリフト等運転作業、清掃・保守管理作業などが例示されています。ただし、専ら関連業務に従事させることは認められません。雇用契約書・1号特定技能外国人支援計画と、現場で実際に担当させる作業を一致させることが必要です。

参考:特定技能とは?制度や他の在留資格、採用方法までわかりやすく解説!

特定技能1号と2号の違い|フィルム加工は2号の対象業務区分にも含まれる

特定技能には「1号」と「2号」の区分があり、在留期間や家族帯同の可否などに違いがあります。

 特定技能1号特定技能2号
在留期間上限5年上限なし(更新制)
家族帯同不可可能
転職同一業務区分内で可能同一業務区分内で可能
技能水準相当程度の知識・技能・経験熟練した技能(監督・指導ができる水準)
フィルム加工対象(機械金属加工・電気電子機器組立て区分)対象(同左。要件は下記)

特定技能2号の対象は「機械金属加工」「電気電子機器組立て」「金属表面処理」の3業務区分で、フィルム加工が含まれる「機械金属加工」「電気電子機器組立て」はいずれも2号の対象です。また、2026年6月1日以降の2号の受入れ対象産業分類(46分類)には、中分類18プラスチック製品製造業も含まれています。JAIMの製造分野特定技能2号評価試験の概要でも、両区分の対象業務にフィルム加工が掲げられています。

2号へ移行するには、日本国内に拠点を持つ企業の製造業の現場での3年以上の実務経験に加え、「製造分野特定技能2号評価試験」と「ビジネス・キャリア検定3級(生産管理関連)」の合格、または「技能検定1級」の合格が必要です。技能検定1級は指定された職種に限られるため、フィルム加工では2号評価試験のルートが中心になると考えられます。日本語能力などその他の要件も含め、最新の運用要領とJAIMの案内で確認してください。

出典:工業製品製造業分野で外国人が従事できる業務区分 | 経済産業省

技能実習との違い | 技能実習から特定技能の移行

技能実習は、開発途上国等への技能移転を目的とした国際貢献の制度であり、在留期間は最長5年、転籍は原則不可という制約があります。
一方、特定技能は人手不足対応を目的とした制度で、同一業務区分内であれば転職が可能です。

技能実習2号を良好に修了した人は、修了した職種・作業と特定技能で従事する業務に関連性が認められる場合は技能試験と日本語試験が免除され、関連性がない場合でも日本語試験は免除されます。ただし、フィルム加工に直接対応する技能実習の職種・作業はありません。プラスチック成形(圧縮成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形など)の修了者をフィルム加工で受け入れる場合も、技能試験が免除されるかどうかは個別に確認が必要です。

2027年開始予定の「育成就労」制度との関係

技能実習制度に代わる育成就労制度は、2027年4月1日に施行されます。
育成就労は、原則3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能と日本語能力を身につけることを目的とした制度です。
ただし、JAIMのFAQ(
2026年9月18日時点)では、フィルム加工は「特定技能のみ」の対象で、育成就労の対象(主たる技能)への追加は検討中とされています。当面、フィルム加工で特定技能1号の人材を確保するには、試験合格者の採用が中心になると考えられます。

参考
育成就労から特定技能に移行する条件とは?新制度の全容と企業が備えるべき定着戦略
特定技能に必要な日本語試験と制度の最新動向を徹底解説

受け入れに必要な試験と日本語要件

特定技能1号の要件は、候補者の経歴によって異なります。新たに採用する場合は、次の技能試験と日本語試験の両方に合格している必要があります。

・技能水準:「製造分野特定技能1号評価試験」のうち、従事する業務区分(フィルム加工の場合は「機械金属加工」または「電気電子機器組立て」)の試験に合格していること。
・日本語能力水準:「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」でA2.2相当以上、または「日本語能力試験(JLPT)」N4以上に合格していること。技能実習2号の良好修了者は、日本語試験が免除されます。

製造分野特定技能1号評価試験は、JAIMが実施しています。
学科・実技ともにCBT方式で、合格基準は学科65%以上・実技60%以上、受験料は8,000円です(2026年9月時点のJAIM案内)
国内のほか、インドネシア、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、インドでも実施されています。日程や申込方法は試験回ごとに異なるため、JAIMの最新案内を確認してください。

フィルム加工の事業所が特定技能人材を採用するメリット

一定の技能水準を確認した人材を採用候補にできる
試験合格または関連する技能実習2号の良好修了により、一定の技能水準を確認できます。ただし、採用直後から自社設備を単独で扱えることを保証する制度ではありません。安全、品質、設備操作に関する自社教育は別途必要です。

長期的な戦力化も見込める
フィルム加工は2号の対象業務区分に含まれるため、実務経験を積み、2号評価試験などに合格すれば、在留期間の上限なく働き続ける道があります。ただし、2号の要件を満たすには3年以上の実務経験と試験の合格が必要です。

採用候補の選択肢を広げられる
同一の業務区分など要件を満たせば転職も可能です。ただし、転職できること自体が定着を保証するわけではありません。報酬、勤務環境、評価・昇給、職場内コミュニケーション、生活支援を含む受入れ設計が定着に影響します。

特定技能所属機関には、適正な雇用契約、1号特定技能外国人支援計画の作成・実施、各種届出、法令遵守などの義務があります。
工業製品製造業分野では、特定技能外国人が働くすべての受入れ事業所について、JAIMへの加入も必要です。候補者探しより先に、自社が受入れ要件を満たせるか確認しましょう。

受入れ企業が満たす主な要件

候補者の要件だけでなく、受入れ企業・事業所にも基準があります。主な確認項目は次のとおりです。

確認項目要点
事業所・業務受入れ事業所が対象産業分類に該当し、担当業務が業務区分の「従事する業務」(フィルム加工など)に該当すること
雇用形態受入れ企業による直接雇用であること(工業製品製造業分野では派遣受入れ不可)
報酬・労働条件同等の業務に従事する日本人と同等以上の報酬など、適切な雇用契約であること
1号支援1号特定技能外国人支援計画を作成・実施すること。全部の実施を登録支援機関へ委託する方法もある
JAIM加入特定技能外国人が働くすべての受入れ事業所についてJAIMへ加入すること
法令遵守・届出出入国・労働・社会保険関係法令を守り、定期・随時の届出等を行うこと

※個別案件では、所属機関の基準や申請書類を最新の運用要領で確認してください。

採用までの流れと進め方

1.受入れ事業所の産業分類を確認する(フィルム加工が主体なら1825、製膜から行う場合は1821など)

2.外国人に担当させる作業が、業務区分「機械金属加工」「電気電子機器組立て」の従事する業務「フィルム加工」などに該当するか確認する

3.候補者の試験合格状況(従事する業務区分の1号評価試験、日本語試験)や技能実習の修了状況を確認する

4.直接雇用契約を結び、日本人と同等以上の報酬と1号支援計画を整える

5.受入れ事業所ごとにJAIMへ加入し、在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請を行う

6.許可後に就労を開始し、安全・品質教育、生活支援、必要な届出を継続する

よくある質問

Q1

オンライン申請の方が安いのはなぜですか?
A

申請者の利便性向上と窓口混雑の緩和を目的に、本体手数料は多くの区分で窓口より低く設定されています。ただし、オンライン申請では別途330円または550円の決済手数料がかかります。
Q2

フィルム加工で特定技能2号へ移行できますか?

A

要件を満たせば可能です。フィルム加工が含まれる「機械金属加工」「電気電子機器組立て」は2号の対象業務区分で、中分類18も2号の対象産業分類に含まれています。ただし、3年以上の実務経験と、2号評価試験などの合格が必要です。
Q3

産業分類1821・1825なら、どの作業でも担当させられますか?

A

いいえ。事業所の産業分類だけでなく、担当させる業務が対象業務区分に該当すること、関連業務だけを主業務にしないこと、企業側の受入れ基準を満たすことが必要です。
 
Q4

フィルムへのグラビア印刷も「フィルム加工」として任せられますか?

A

フィルム加工の従事する業務は、ドライラミネート、押出ラミネート、スリット、製袋、フラットヤーンの5つです。グラビア印刷は、業務区分「印刷・製本」の従事する業務に掲げられています。印刷を主に担当させる場合は、事業所の産業分類と業務区分の組合せを含めて別途確認が必要です。
Q5

フィルム加工の外国人採用にはどれくらい時間がかかりますか?

A

海外から採用する場合は候補者選定、在留資格申請などを含めて目安として4〜6か月程度かかります(候補者の状況や申請時期により前後します)。国内在留者からの採用は比較的短期間で進められる場合があります。

まとめ

フィルム加工は、特定技能「工業製品製造業分野」の業務区分「機械金属加工」「電気電子機器組立て」に追加された「従事する業務」です。
プラスチックフィルム製造業(1821)やプラスチックフィルム・シート等加工業(1825)などの事業所であれば、条件を満たすことで特定技能1号の外国人を受け入れることができ、2号への移行も視野に入ります。ただし、産業分類に該当するだけで採用できるわけではありません。事業所の産業分類と担当業務の組合せ、本人の技能・日本語要件、直接雇用・報酬・支援体制、受入れ事業所ごとのJAIM加入、在留資格審査を一つずつ確認する必要があります。

最初に整理したいのは「自社事業所の産業分類」「任せたい工程」「候補者の経歴・試験」「支援体制」の4点です。これらを候補者紹介の前に確認すると、対象外業務への配置や申請のやり直しを防ぎやすくなります。

「自社工場が対象になるのか分からない」「どの工程まで特定技能人材が担当できるのか確認したい」という場合は、お気軽にご相談(無料)ください。事業所の製造品や工程内容をもとに、特定技能人材を受け入れられるか一緒に確認いたします。

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