特定技能の訪問介護はいつから?解禁後のメリット・デメリットを解説

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介護業界は慢性的に人手不足と言われていますが、その中の1つでも訪問介護があります。
訪問介護とは、利用者の自宅に訪問して介護サービスを提供するものです。高齢化が進む日本では非常に重要な役割を担っています。

しかし、現状では特定技能外国人で訪問介護の雇用が認められていません。
特定技能制度は施設介護を中心で、訪問介護に特化した外国人材の受け入れには至っていないですが、
2024年6月19日の有識者検討会で、訪問介護サービスへの特定技能外国人導入を解禁の方針を決定しました。

今回は、特定技能の訪問介護はいつから始まるのか?解禁後のメリット、デメリットについて詳しく解説していきます。

訪問介護員(ホームヘルパー・ヘルパー)の人材不足

2023年6月の厚生労働省の「職業安定業務統計」によると、2022年度は訪問介護職員の有効求人倍率は15.53倍(施設系介護職員の約4倍)と過去最高を記録し、
いまでもこの人手不足は解消されていません。
また、令和5年度「介護労働実態調査」(公益財団法人介護労働安定センター)によると、以下のことが問題として挙げられています。

人材の確保や定着率の状況とは?  依然として従業員の不足感は強いままの傾向にあります。
事業所全体の従業員の過不足感は、「大いに不足」、「不足」、「やや不足」を合計すると64.7%に上っています。
また、より深刻な不足感を意味する「大いに不足」と「不足」の合計も34.0%という結果でした。 

職種別では、特に「訪問介護員」において「大いに不足」、「不足」、「やや不足」の合計が約8割、
「大いに不足」と「不足」の合計でも約6割に達しています。

一方で、採用率は増加、離職率は減少しています。
訪問介護員、介護職員を合わせた2職種の採用率は、2012年度(23.2%)以来減少傾向にありましたが、
2021年度を底に2年連続で対前年度比増となり、2023年度は16.9%となっています。
また、離職率は2012年度(17.0%)以来減少傾向にあります。
2022年度は一時的に微増となったものの、2023年度は再び対前年度比減となり、離職率は13.1%でした。

訪問介護員の離職率は低下傾向にあり、離職率が低下傾向にあるとする事業所は、
離職率低下の「理由」として、職場の人間関係の改善を1位にあげています。
「職場の人間関係がよくなったため」(63.6%)
「残業削減、有給休暇の取得促進、シフトの見直し等を進めたため」(45.6%)
「職場全体で介護の質を高めるための意識を共有したため」(37.8%)
「賃金水準が向上したため」(36.3%)
「仕事と家庭(育児・介護)の両立の支援を充実させたため」(36.1%)

また、外国籍労働者を現在受け入れていない事業所のうち、
「今後、受け入れを検討してみたい」(31.4%)
「受け入れたいが、どういう手続きを進めれば受け入れられるかわからない」(7.8%)
合計39.2%が外国籍労働者を受け入れる意向を示しています。 

なお、前年度調査では、外国籍労働者を受け入れている、受け入れていないの両方を合わせた全事業所のうち、
13.1%が外国籍労働者を「新たに活用する予定がある」と回答しています。

今年度調査において、上記割合を全事業所に対する割合で換算すると、受け入れについて前向きな事業所は全体の 45.1%と、
換算データであることを踏まえても前年度から大幅に増えており、外国籍労働者の受け入れに対する認識は
大きく変わってきたのではないかと考えることができます。

出典:令和5年度「介護労働実態調査」結果の概要について | 公益財団法人介護労働安定センター

ついに解禁!政府の方針決定とは?特定技能の訪問介護への導入

そのような深刻な人材不足を受けて、厚生労働省は2024年6月19日の有識者検討会で
訪問介護サービスへの特定技能外国人導入を解禁の方針を決めました。
厚生労働省から「第7回外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会」の資料が、掲載されておりますので詳しく知りたい方はこちら

現状では、特定技能の訪問介護への導入は認められていません。
外国人で訪問介護として就労できるのは、
「介護福祉士(在留資格:介護)」「EPA介護福祉士(候補者は不可)」「身分系在留資格保有者」などに限られます。

特定技能介護の訪問介護導入はいつから?(2024年9月末時点)

特定技能介護の訪問介護導入が解禁の方針が発表されましたが、どのようなスケージュールで導入されていくのか解説していきます。
まず、導入時期については、「早ければ2025年度中」を目指しているようです。

2025年度中とありますが、2025年4月からいきなりスタートではないかと予想されます。
2026年の3月まで、もしくは遅い場合だと2026年度以降と見た方が良いかもしれません。
また、特定技能で訪問介護をできる条件を設けられるか検討されています。
「介護職員初任者研修を修了している者」など、日本人と同様に一定条件を満たす外国人材による訪問介護を認めるべきという意見が出されており、
初任者研修の修了は必須条件になりそうです。

さらに、事業者に対して以下のことを求めています。

        •    ①訪問介護の基本事項や日本の生活様式を含む研修の実施
             ②一定期間の同行支援の提供
             ③キャリアパスの構築に向けた計画の作成
             ④ハラスメント防止のための対応マニュアルの作成

この中でも特に①②は重要ですし、③④は離職防止、定着化にも大きく関係してくるかと思います。

訪問介護の解禁に向けてのメリット・デメリット

深刻な人手不足解消のためには不可欠と言える政府の施策案ですが、訪問介護の導入が解禁された後の
メリット、デメリットは以下のように推測しています。

メリット

    1.   1.今まで外国人介護人材を採用できなかった訪問系事業者にとっては若い人材獲得のチャンス
        2.例えば、訪問介護事業所、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)、特定施設ではない住宅型有料老人ホームなど
    2.   3.施設系で実務経験を積んだ外国人介護スタッフにとってもステップアップのチャンス
    3.   4.政府が推奨している在宅介護強化の流れにも沿っている

デメリット

1.資金力のある訪問系の大手事業者による人材獲得が始まると、施設系事業者との人材の奪い合いになる可能性がある
2.施設系事業者の中でも資金力、採用条件で劣る場合は人材獲得が難しくなる
3.日本語力が高い介護経験者ほど、より条件の良い訪問系の求人へ流れる可能性がある
4.受入れや指導体制が不十分なまま業務させることで、トラブルや人権侵害などの問題も発生可能性ある

実際にふたを開けてみないとわからない部分もありますが、需要と供給のバランスから、
特に採用を巡っての激しい争奪戦が繰り広げられるのは確実かと思われます。

特定技能介護人材の採用のポイント

2020年春から始まったコロナ禍による入国規制により、一時期を除きほぼ新規の技能実習生の入国が止まりました。
2022年春まで鎖国状態が続いたことにより、現在、技能実習生2号(3年間)を修了の候補者はおらず、2025年4月まで待つ状態となります。
(→特定技能の2024年問題)

一方で、コロナ禍で帰国困難となった彼らの多くが特定技能介護へ転職し、今では実務経験3年を経て介護福祉士の国試合格者も増えています。
介護経験1~2年で夜勤経験者は、残り3~4年特定技能介護として働けるうえに、比較的早い段階で介護福祉士へのステップアップも見込まれます。
訪問介護は彼らのような経験者を採用していく方が即戦力化しやすく、トラブルも起きにくいと思われます。

また、外国人介護福祉士は介護職のリーダー候補になりえる存在です。
特定技能介護のサポートや指導や、日本人スタッフと特定技能介護との間に入りリーダーとして業務に従事することで、
日本人スタッフの負担を低減することが期待できます。

特定技能介護から介護福祉士へのステップアップ

2023年度末で、在留資格介護の保有者は前年同期に比べて約1.5倍、3,000人近く増えています。
この中で、介護福祉士留学生は同年度の在籍者数から見て最大800名以下と見られます。
したがって、2000名以上が実務経験3年を経て国試合格したと推測できます。(※正式な人数は現時点で未公表)

外国人介護福祉士の現状と試験について

2024年1月の合格最低点が基準の75点から67点と8点も大幅に下がりました。
現時点で介護分野では特定技能2号が認められておりません。
また、2027年3月を以って介護福祉士養成校の卒業生に対する経過措置(国試不合格でも介護福祉士取得)が終了予定となります。
そのことから、厚労省が「難度調整をしている」という見方もありますが、
いずれにしても、外国人が合格しやすくなることは各方面から歓迎されるでしょう。

さらに今後、試験制度の見直しもあり、2026年から介護福祉士の試験を3分野に分かれており、それを1つづつ合格すれば介護福祉士になりえますが
特定技能外国人は5年間の在留期限の縛りがある中で試験を合格しなければいけないので、そんな悠長なことを言っていられません。
介護職未経験からスタートした場合、1回か2回の試験チャンスをものにする必要があります。

やる気のある特定技能介護スタッフがいた場合は、護福祉士の道へ育成するために、5つのことを取り組むことが重要と考えています。

    1.    1.早い段階から介護福祉士を目指すよう意識付けをする
    2.    2.合格後のキャリアパスや処遇の明示をする
    3.    3.初任者研修、実務者研修の取得サポート(費用や手続きなど)
    4.    4.日本語レベルが向上できるような環境作り(N2取得目標)
    5.    5.オンライン受講などの国試対策を受講してもらうようサポートする


「1と2」は、入職者の離職防止につながり、「3」のサポートがあれば、前向きに介護福祉士を目指すように取り組めると思います。
なるべく早めに介護福祉士を取得してもらうことでモチベーションも上がりますし、手当がつく場合は処遇面でもプラスになります。
「4」は、N3以上保有者に対して入職後、EPA介護福祉士の指導経験のある教師による日本語のオンラインレッスンをStepjobでは提供(隔週、無償)しています。
「5」は、母国語で教わるのが理解が早く、合格率も上がりやすい傾向があります。

Stepjobでは、直接的に講座を提供しておりませんが、ベトナム語、インドネシア語など、
国別の対策講座をやっている教育機関の通信講座(オンライン)を受講させることで、国試合格をサポートしていきます。

特定技能介護の訪問介護についての要点

    •    ・訪問介護への特定技能の導入・解禁は2025年度中またはそれ以降
         ・訪問系事業者が加わり、外国人介護人材の獲得競争が激化しそう
         ・初任者研修の取得は必須になりそう。受入れ後の指導・教育体制もカギに
         ・キャリアパスと処遇を明示しつつ、初任者研修→実務者研修を受けさせ、
    •     介護福祉士へのステップアップをサポートすることで、離職防止にもつながる

まとめ

今回は、特定技能介護の訪問介護について解説しました。
訪問介護の導入の解禁を発表されましたが、検討段階の部分も多いため確定されていないことが多いです。
その状況でも、先取りして状況の把握や、特定介護介護を受け入れる準備を前もってしておくことで、
スムーズに人材を確保することができるでしょう。
また、単に人材不足を補うだけでなく、人材育成の観点から採用、指導・教育を行うことで、
将来のリーダー候補(介護福祉士)としての活用も期待できます。

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