技能実習から特定技能への移行は可能?注意点や手続きの流れを紹介
在留資格「技能実習」と「特定技能」。どちらも少子高齢化が進み人手不足の日本では欠かせない存在として、多くの企業で導入されています。
様々な業界で活躍している在留資格なので、似たようなものという印象がありますが、制度や要件は異なります。
それぞれの在留資格の概要と主な違い、現在特定技能の認定ルートとしては一番多いとされている技能実習からの移行方法について詳しく解説します。
特定技能と技能実習の主な違い
在留資格「技能実習」は日本の術や知識を学んでもらい、本国へ学んだ技術などを持ち帰り広めてもらう、人材育成と国際協力を目的とした在留資格です。
1960年代より「研修制度」として研修生が受け入れられていましたが、1993年に技能実習制度として整備されました。
在留資格「特定技能」とは、生産性の向上や国内人材の確保のための取り組みを行っても、
なお、人材の確保が困難な状況にある14の産業分野に限り、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人労働者の受け入れが可能です。
特定技能と技能実習の制度比較
「技能実習」と「特定技能」では上記の制度の目的が異なるほか、主に以下の点が異なってきます。
- ・受入方法(技能実習は海外の機関と連携した監理団体のみ)
- ・受入人数枠(技能実習は制限あり、特定技能は介護・建設以外は人数枠なし)
- ・転職(技能実習は原則不可、特定技能は可能)
・その他 「技能実習」と「特定技能」の違いをまとめた一覧がありますので参照ください。
技能実習から特定技能に移行は可能?
技能実習から特定技能への移行は可能です。
特定技能の採用ルートには、特定技能日本語・技能試験を経る「試験ルート」と技能実習から移行する「技能実習ルート」の2つが主なものとなりますが、
2024年6月末のデータによると特定技能の総数251,594人のうち、「試験ルート」が93,137人、「技能実習ルート」が158,133人と「技能実習ルート」が6割近くを占めています。
ただし、技能実習生すべてが特定技能になれるわけではなく、特定技能の同じ分野の技能実習修了証明書等がなければ移行できません。
同じ分野でない場合は技能実習生でも分野ごとの特定技能技能試験に合格しないといけません。要件の詳細について詳しく解説していきます。
「特定技能」へ移行するための要件
「技能実習」から「特定技能」移行の条件は、以下2点あります。
- ・技能実習2号を良好に修了していること
- ・技能実習の職種・作業内容と、特定技能1号の業務に関連性が認められること
移行の場合に限らず、特定技能取得の要件は特定技能の技能試験と日本語試験の両方に受かることです。
ただし、「技能実習」から「特定技能」への移行の場合は、上の2つの条件を満たせば試験なしで特定技能に移行することが可能です。
特定技能技能試験と日本語試験が免除となる場合
- ・技能実習2号を良好に修了していること
- ・技能実習の職種・作業内容と、特定技能1号の業務に関連性が認められること
技能実習と同分野の特定技能1号に移行する場合は、技能実2号を優良に修了していれば特定技能技能試験と日本語試験が免除されます。
特定技能日本語試験のみが免除
- 技能実習2号を良好に修了していること
技能実習と異なる分野の特定技能1号に移行する場合は、技能実2号を優良に修了すれば特定技能日本語試験は免除されますが、
進みたい分野の技能試験の合格が必要です。
移行可能な分野
特定技能は14分野にわかれていますが、技能実習2号移行対象職種の全てが、特定技能に移行できるわけではありません。
リネンサプライは技能実習にはありますが特定技能にはない、
逆に特定技能外食には移行できる技能実習2号がない(一部の例外は除く)など、注意が必要です。
技能実習2号移行対象職種が特定技能の分野に当てはまるかどうか確認するには、
以下の出入国在留管理庁の資料「外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」の参考資料①および②の表を確認するとわかりやすかと思います。
「特定技能」への移行のメリット
特定技能への移行のメリットとして以下2点があげられます。
- 引き続き日本で働いてもらえる(特定技能2号への道=永住への道がひらける)
- 人数制限がなくなる(介護・建設除く)
特定技能は技能実習と異なり転職が可能とはなりますが、特定技能となることで技能実習終了後5年間日本に在留することができ、
2号に移行できた場合には更に5年、在留10年で永住権の申請も可能性が出てきます。
長く働いてもらえる可能性ができることは、企業にとっても外国人本人に取ってもメリットとなり得ます。
技能実習の人数制限については、受入企業の認定や常勤職員の数に応じて受入人数枠が定められています。
特定技能に関しては、介護と建設分野のみ制限がありますが(常勤職員の総数を超えない範囲)その他の分野では特段制限なく採用可能となっています。
「特定技能」への移行のデメリット
特定技能への移行のデメリットとして下記2点があげられます。
- ・技能実習と違い転職が可能
- ・賃金が技能実習より高くなる
転職ができるうえに、特定技能は同等の業務に従事する日本人労働者の報酬の額と同等以上の賃金を支払う必要があります。
特に技能実習からの移行の場合、3年または5年の経験者として扱う必要もあるため、技能実習より賃金が高くなる場合が通常です。
特定技能から特定技能への移行手続きは?
移行必要な書類
技能実習から特定技能への移行の場合、既にほかの在留資格(=技能実習)を持って日本に滞在されている者が活動内容を変更することになるので、
「在留資格変更申請手続き」となります。
在留資格変更申請手続きに必要な書類は以下の通りです。
- ・在留資格変更許可申請書
- ・写真
- ・申請人のパスポート及び在留カード 提示
- ・その他の書類については在留資格「特定技能」 | 出入国在留管理庁の「特定技能外国人の在留諸申請に係る提出書類一覧・確認表」を参照
特定技能外国人の在留諸申請に係る提出書類一覧・確認表」からの抜粋
上の第1表・第2表・第3表については特定技能在留資格変更申請書提出時のチェックリストとして機能し、提出が必要となる書類の一覧になります。
申請する本人に関する書類になります。在留資格変更申請書や雇用契約書の写しのほか、課税・納税証明書などが記載されています。
(2)所属機関に関する必要書類
採用する企業の必要書類になり、会社規模・種別によって用意する資料が異なります。
(3)分野に関する必要書類
特定技能の分野別の必要書類になります。
主に特定技能の各分野の技能条件を示す内容となり技能評価試験の合格証などが含まれますが、
同じ分野での移行の場合「申請人が技能実習2号良好修了者(2年10か月以上)の場合」という欄を参照し、
技能実習の技能検定(3級)の実技試験の合格証明書または評価調書が提出書類となります。
こちらを提出することにより特定技能の技能・日本語試験の合格証は不要となります。
移行にかかる費用
技能実習から特定技能へ切替の際にかかる一般的な費用をまとめてみました。
費用はあくまでも目安であり、登録支援機関や行政書士、送出機関によって異なります。
※出身国によっては申請において何らか現地での手続きが必要な場合があります。
移行の手順
技能実習から特定技能になる方の採用の流れは、人材募集や面接など通常の特定技能の採用の流れと同じで以下の通りとなります。
- 1.受け入れ要件の確認
- 2.人材募集、面接
- 3.雇用契約を結ぶ
- 4.支援計画を策定する
- 5.在留資格申請を行う
- 6.業務開始
切替に必要な期間
技能実習から特定技能など国内在住外国人の在留資格変更許可申請は概ね2か月~3か月程度かかります。
なお、在留資格変更許可申請は一般的には現状の在留資格の在留期限3か月前から受付可能です。入社時期を見越して早めに手続きすることをお勧めします。
在留期間によっては特例措置「特定活動」の申請を検討する
「特定技能1号」の在留資格に変更予定だが、在留期間の満了日までに必要な書類を揃えることができない場合、
「特定技能1号」で就労予定の受入れ機関で就労しながら、移行のための準備を行うことができる「特定活動(6か月)」への在留資格変更ができます。
この特例措置の要件は以下の通りです。
特例措置適用要件
- ・申請人の在留期間の満了日までに「特定技能1号」への在留資格変更許可申請を行うことが困難である合理的な理由があること
- ・申請人が「特定技能1号」で従事する予定業務に従事すること
- ・申請人が「特定技能」となった際に支払われる予定報酬額が支払われること
- ・申請人が技能実習2号良好修了者であること
なお、この特例措置の「特定活動」の期間も特定技能の通算5年間に含まれ、外国人に対する支援も必要になるので注意が必要です。
技能実習から特定技能へに移行における注意点
分野や国ごとに独自の要件がある
移行に必要な手続きのところで解説したとおり、分野によって要件が異なるため分野独自の追加資料が必要な場合があります。
また、特定技能は円滑かつ適正な送出し・受入れの確保等のために送出国との間で二国間協定を締結しており、
国によっては申請の過程で別途の手続きが必要な場合もあり、注意が必要です。
特定技能を採用できる国籍についても詳しく記載しております。
特定技能外国人を採用できる国籍は?国別で特徴・独自の手続きを徹底解説
手続き期間中の一時帰国における注意事項
技能実習から特定技能へ移行する場合、国内に居住しながら在留資格変更申請の手続きができるので特に一時帰国する必要はありません。
在留資格変更許可申請中に一時帰国をする場合、現状のビザ期限が過ぎても再入国は可能ですが、
出国時に誤って再入国の手続きを失念する場合もありますので一時帰国はなるべくビザの期限内に戻るよう調整するとスムーズです。
また、就労して厚生年金に入っている外国人が退職して帰国する際、一定の条件を満たしていれば、
納めた社会保険料の一部を「脱退一時金」として受け取れる制度があります。
脱退一時金を受け取るには、少なくとも退職して厚生年金を脱退し、日本の住所も海外に移す必要があります。
技能実習から特定技能に移行する際に転職をするケースが多いので、移行時に「脱退一時金」の受取手続きをする外国人が一定数います。
手続きは可能ですが、一時金を受け取るまで再入国できないなどの制限がありますので注意が必要です。
なお、日本の公的年金制度に10年以上加入すると、一定条件下で老齢年金を受給できますが、脱退一時金を請求すると、
それ以前に支払った年金の期間がすべて無効となります。
また脱退一時金を受け取っていると永住権を申請する際に不利になる恐れがあります。
そのため、特定技能等で日本に長期的に滞在することを計画している場合には、
脱退一時金を受け取るかどうかは、将来永住権を申請する予定や日本で老齢年金を受け取る可能性を十分に考慮した上で判断することが大切です。
まとめ
技能実習から特定技能に更新する際の雇用する際の手順・注意事項を中心にまとめました。
技能実習から特定技能へ移行するいわゆる「技能実習ルート」は特定技能採用においてはメジャーなルートで人数も多いところではありますが、
本稿に記載したとおり分野や国ごとに独自の要件があり、手続きが複雑な場合もあります。
特に外国人を初めて採用する場合は、外国人に特化した人材会社を利用することをおすすめします。
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