近年、日本の労働力不足を背景に、ベトナム人労働者の採用が急速に拡大しています。特定技能制度や技能実習制度を活用した人材採用を検討される企業が増える中、「ベトナム人の性格や特徴はどのようなものか」「日本の職場に適応できるのか」といった疑問をお持ちの採用担当者も多いのではないでしょうか。
ベトナム人労働者の採用を成功させるためには、彼らの文化的背景や価値観、仕事に対する考え方を正しく理解することが不可欠です。本記事では、ベトナム人の国民性から職場での特徴、効果的な雇用のポイントまで、採用担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説いたします。
ベトナム人を理解するための基礎データ:文化・地域ごとの特徴
ベトナム人労働者を効果的に雇用するためには、まずベトナムという国の基本的な地理や文化、宗教的背景を理解することが重要です。地域ごとに異なる特徴を把握することで、採用や職場での指導において適切なアプローチを取ることができます。
地理と人口
ベトナムは東南アジアに位置する南北に細長い国で、人口約1億30万人を擁します。国土は北部、中部、南部の3つの地域に大きく分けられ、それぞれ異なる社会的・経済的背景を持っています。
北部(ハノイ周辺)は首都を中心とした政治・行政の中心地域で、比較的保守的で規律を重んじる文化があります。中部(フエ、ダナン周辺)は古都を擁する文化的中心地域で、伝統を大切にしながらも挑戦精神が旺盛な傾向があります。南部(ホーチミン周辺)は経済の中心地域で、商業的で開放的、楽観的な気質を持つ人が多いとされています。
ベトナム人が話す言語はベトナム語が主流ですが、地域ごとに方言が存在します。北部は標準的なベトナム語、中部は独特のアクセント、南部は比較的ゆったりとした話し方をする傾向があります。また、フランス植民地時代の影響で、ベトナム語の単語の中にはフランス語由来のものがいくつもあります。
ベトナムの宗教
ベトナムでは仏教(主に大乗仏教)が約4%、カトリックが約6%の信者を持ちますが、実際には祖先崇拝や儒教思想を基盤とした独特の文化が根強く残っています。多くのベトナム人は特定の宗教に深く帰依するというよりも、祖先を敬い、家族を大切にする価値観を強く持っています。ベトナムでは、日本と同じように「無宗教」と言われる人が多く存在します。信仰の自由が認められており、特定の宗教に強く依存しない国民性が特徴です。
特に重要なのは、旧正月「テト」の存在です。テトはベトナム人にとって最も重要な祝日で、家族が一堂に会する大切な時期です。この期間中は帰省のため長期休暇を取ることが一般的で、雇用する際にはこの文化的背景を理解し、休暇の調整を行うことが重要です。
家族中心の文化は仕事観にも大きく影響し、家族を支えるために働くという意識が非常に強いことが特徴です。これは日本での就労においても高いモチベーションの源泉となりますが、同時に家族の事情による急な帰国や長期休暇の必要性も理解しておく必要があります。
ベトナム人の性格と文化:職場での特徴と日本人との比較
ベトナム人の性格や文化的特徴を理解することは、職場でのコミュニケーションや業務指導を円滑に進める上で極めて重要です。地域ごとの違いや日本人との共通点・相違点を把握することで、より効果的な人材活用が可能になります。
ベトナム人の性格と特徴は?
ベトナム人の一般的な性格として、勤勉で真面目、親しみやすく礼儀正しいという特徴が挙げられます。しかし、出身地域によって職場での行動パターンには明確な違いが見られます。
北部出身者の特徴
北部(ハノイ周辺)出身のベトナム人は、計画的で責任感が強い傾向があります。政治・行政の中心地域で育った影響から、規則や手順を重視し、与えられた業務を確実に遂行する能力に優れています。職場では慎重な判断を行い、上司の指示に対して忠実に従う姿勢を見せます。チームワークを重視し、組織の調和を保つことを大切にする特徴があります。
南部出身者の特徴
南部(ホーチミン周辺)出身のベトナム人は、楽天的でフレンドリーな性格が特徴的です。商業都市で育った影響から、コミュニケーション能力が高く、新しい環境や人間関係に柔軟に適応します。積極性があり、困難な状況でも前向きに取り組む姿勢を持っています。創意工夫を重視し、効率的な作業方法を見つけることが得意です。
中部出身者の特徴
中部(フエ、ダナン周辺)出身のベトナム人は、チャレンジ精神旺盛で努力家の傾向が強くあります。古都の文化を継承しながらも、新しいことに挑戦することを恐れません。技術習得に対する意欲が高く、困難な課題に対しても粘り強く取り組みます。職人気質を持ち、品質向上に対して強いこだわりを示すことが特徴です。
これらの特徴は職場のチームワークや業務遂行に大きく影響します。例えば、北部出身者は品質管理や事務処理などの正確性が求められる業務に適しており、南部出身者は接客や営業などの対人スキルが重要な業務で力を発揮します。中部出身者は技術職や製造業での技能向上において高い能力を示す傾向があります。
日本人とベトナム人の共通点と違い
日本人とベトナム人には多くの共通点がある一方で、重要な相違点も存在します。これらを理解することで、より円滑な職場環境を構築できます。
共通点: 勤勉さと礼儀正しさは、両国に共通する重要な価値観です。ベトナム人も日本人と同様に、上司や年長者に対する敬意を重んじ、職場での協調性を大切にします。また、技術や知識の習得に対する意欲も高く、継続的な学習を通じて自己改善を図る姿勢を持っています。責任感が強く、与えられた業務に対して真摯に取り組む姿勢も共通の特徴です。
相違点: 最も大きな違いは、家族優先の価値観です。ベトナム人にとって家族は何よりも重要な存在であり、家族の事情が仕事に影響することがあります。例えば、家族の病気や重要な行事のために急な休暇を取る必要が生じる場合があります。
残業に対する考え方も異なります。日本では残業が当然視される風潮がありますが、ベトナム人は家族との時間を重視するため、過度な残業に対しては理解を示さない場合があります。ただし、目的が明確で適切な対価が支払われる残業については、積極的に取り組む姿勢を見せます。
コミュニケーションスタイルにも違いがあります。ベトナム人は直接的な批判や否定を避ける傾向があり、問題があっても「大丈夫です」と答えることがあります。これは相手への配慮から生じる行動ですが、日本の職場では誤解を招く可能性があるため、定期的な理解度確認が重要になります。
日本で働くベトナム人の現状:特定技能と仕事観の実態
日本におけるベトナム人労働者の現状を数値とともに理解することで、採用戦略の参考にすることができます。また、彼らがなぜ日本で働くのか、どのような職場で活躍しているのかを知ることで、適切な労働環境の提供につながります。
労働者数の推移
厚生労働省の「外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)」によると、2024年10月末時点で日本で働くベトナム人労働者数は570,708人となり、外国人労働者全体の24.8%を占めています。これは全国籍中最も多い数字で、前年同期比で10.1%の増加を示しています。
2023年10月末時点では518,364人(全体の25.3%)であったことから、1年間で約5万2千人の大幅な増加となっています。
参考:JETRO「日本の外国人労働者は過去最高の230万人、最多はベトナム人の57万人」
在留資格別では、技能実習が223,291人(前年比6.7%増)と最も多く、次いで専門的・技術的分野の在留資格が196,049人(前年比22.6%増)となっており、特に専門的・技術的分野での大幅な増加が注目されます。
ベトナム人が多く就労している業界としては、製造業が最も多く、ベトナム人労働者全体の38.8%が製造業に従事しています。
参考:海外人材タイムス「【最新】ベトナムが1位? 日本で働く外国人労働者数の国別ランキング」
主要な就労分野は以下の通りです:
- 製造業:自動車部品、電子機器、食品加工など
- 建設業:土木工事、建築、設備工事など
- 農業:野菜栽培、畜産、水産加工など
- サービス業:清掃、宿泊、飲食など
- その他:介護、運輸、卸売・小売など
これらの分野では、ベトナム人の手先の器用さ、真面目な勤務態度、チームワークを重視する姿勢が高く評価されています。
参照①:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)
参照②:特定技能在留外国人数 | 出入国在留管理庁
仕事観
ベトナム人が重視する仕事上の価値観を理解することは、効果的な人材管理において極めて重要です。彼らの仕事観は家族重視と成果主義という2つの柱で構成されています。
家族優先の価値観→多くのベトナム人労働者にとって、日本での就労の最大の目的は家族の生活向上です。故郷の家族への仕送りや子どもの教育費確保など、明確な経済的目標を持って働いています。このため、安定した収入と長期的な雇用の保証を重視する傾向があります。
成果主義的な考え方→ベトナム人は努力に対する正当な評価と報酬を強く求めます。能力向上や業績向上に対して適切に評価されることで、より高いモチベーションを発揮します。昇進や昇給の基準が明確で、実力に応じたキャリアアップの機会があることを重要視しています。
「ベトナム人はなぜ日本で働くのか?」 この質問に対する答えは、主に以下の3つの理由に集約されます:
- 1.経済的メリット: ベトナムと日本の賃金格差は依然として大きく、日本での就労により家族の生活水準を大幅に向上させることができます。
- 2.技術・スキル習得: 日本の高度な技術や製造技術、サービス業のノウハウを学ぶことで、将来のキャリアアップにつなげることができます。
- 3.家族支援: 子どもの教育費や両親の医療費、住宅購入資金など、家族のための資金確保が主要な動機となっています。
給与に対しては非常に敏感で、同じ職場でも国籍や経験による給与格差がある場合は不満を抱きやすい傾向があります。透明性のある給与体系と公平な評価制度の構築が、長期雇用の成功要因となります。
ベトナム人雇用のメリットと成功のための注意点
ベトナム人労働者の雇用は企業にとって多くのメリットをもたらしますが、同時に注意すべきポイントも存在します。これらを事前に理解し、適切な対策を講じることで、雇用の成功確率を大幅に向上させることができます。
メリット
勤勉さと真面目な勤務態度→ベトナム人労働者の最大の特徴は、その勤勉さと真面目な勤務態度です。遅刻や欠勤が少なく、与えられた業務に対して責任感を持って取り組みます。特に、明確な目標設定がされている場合、その達成に向けて集中力を発揮し、困難な状況でも粘り強く作業を継続する能力を持っています。
成果主義的な働き方→ベトナム人は努力に対する正当な評価を重視するため、成果を上げることに対して非常に積極的です。個人の業績向上が給与や昇進に直結することを理解すると、自発的に技術向上や業務改善に取り組む姿勢を見せます。この特徴は、生産性向上を目指す企業にとって大きなメリットとなります。
ITスキルと手先の器用さ→若い世代のベトナム人は、基礎的なITスキルを身につけていることが多く、デジタル化が進む職場環境に比較的容易に適応できます。また、伝統的に手工芸が盛んな文化背景から、手先が器用で精密作業を得意とする人が多いことも特徴です。製造業や建設業において、この能力は高く評価されています。
チームワークとコミュニケーション能力→ベトナム人は集団主義的な文化背景から、チームでの協働を重視します。同僚との調和を保ちながら、全体の目標達成に向けて協力する能力に優れています。また、フレンドリーな性格から、職場の雰囲気を明るくし、チーム全体のモチベーション向上に貢献することも多くあります。
注意点
コミュニケーションの課題→日本語能力の個人差や、日本人側にありがちな間接的な言い回しにより、コミュニケーションの誤解が生じることがあります。特に、問題があっても「大丈夫です」と答える傾向があるため、定期的な理解度確認や、安心して質問できる環境作りが重要です。また、安全に関わる指示については、より丁寧な確認プロセスが必要になります。
給与体系への敏感さ→ベトナム人は給与や待遇に対して非常に敏感で、同じ職場での給与格差や残業代の支払い方法について関心が高いです。不透明な給与体系や不公平な扱いは、すぐに不満につながり、離職の原因となります。明確で公平な給与制度の構築と、その説明が欠かせません。
「ベトナム人にやってはいけないことは何ですか?」 この質問に対する重要な注意点をいくつか挙げると:
- 家族の価値観を軽視すること: 家族を最優先するベトナム人の価値観を理解せず、家族の事情による休暇要請を頭ごなしに否定することは避けるべきです。
- 無礼な言動や差別的な扱い: 国籍や文化の違いを理由とした差別的な発言や、人格を否定するような叱責は、深刻な信頼関係の悪化を招きます。
- 不明確な指示や曖昧な期待: ベトナム人は明確な目標設定を好むため、曖昧な指示や不明確な期待は混乱と不安を招きます。
- 約束の不履行: 昇進や昇給に関する約束、研修機会の提供など、一度した約束を守らないことは、深刻な信頼失墜につながります。
これらの注意点を理解し、適切な対応を心がけることで、ベトナム人労働者との良好な関係を築き、長期的な雇用の成功を実現することができます。
ベトナム人雇用を成功させるポイント:コミュニケーションと職場環境の改善
ベトナム人労働者の採用を成功させるためには、効果的なコミュニケーション手法の確立と、文化的背景に配慮した職場環境の整備が不可欠です。また、長期的なキャリア支援の提供により、優秀な人材の定着を図ることができます。
コミュニケーションの工夫
シンプルで分かりやすい日本語の使用→ベトナム人とのコミュニケーションでは、複雑な敬語や方言、専門用語の多用を避け、基本的な日本語を用いることが重要です。指示を出す際は、一度に多くの情報を伝えるのではなく、ポイントを絞って段階的に説明することで理解度を向上させることができます。また、重要な内容については文書化し、後で確認できるようにしておくことも効果的です。
地域文化の尊重と理解→ベトナムの地域ごとの文化的特徴を理解し、それぞれの出身地域に応じたアプローチを取ることが重要です。北部出身者には規律と手順を重視したコミュニケーション、南部出身者には親しみやすく開放的なコミュニケーション、中部出身者には技術的な成長を重視したコミュニケーションを心がけることで、より効果的な関係構築が可能になります。
信頼構築のための継続的な取り組み→ベトナム人は人間関係を非常に重視するため、信頼関係の構築には時間をかける必要があります。定期的な面談や懇親会、業務外でのコミュニケーション機会を設けることで、相互理解を深めることができます。また、約束したことは必ず守り、問題が発生した際は迅速かつ公平に対応することで、信頼関係を強化できます。
職場環境の整備
ベトナム人同士のコミュニティ形成支援→同じ文化的背景を持つベトナム人同士のコミュニティ形成を支援することで、日本での生活適応を促進できます。先輩ベトナム人従業員によるメンター制度の導入や、ベトナム人グループでの情報共有の場を設けることで、新入社員の不安軽減と早期定着を図ることができます。
文化的背景に配慮した職場作り→ベトナムの文化や習慣に配慮した職場環境を整備することが重要です。例えば、イスラム教徒のベトナム人のための礼拝スペースの確保、テト期間中の特別休暇制度の導入、ベトナム料理を調理できる設備の提供などが考えられます。これらの配慮により、従業員の満足度と定着率を向上させることができます。
安全教育とイベントの導入→日本の労働安全基準や職場でのマナーについて、ベトナム語での説明資料や動画を用いた安全教育を実施することが重要です。また、ベトナムの文化を紹介するイベントや日本の文化を学ぶ機会を設けることで、相互理解を深め、職場の一体感を醸成することができます。
キャリア支援
日本語学習支援の充実→長期的な雇用を成功させるためには、日本語能力の向上支援が不可欠です。業務時間内での日本語研修の実施、日本語能力試験の受験費用補助、eラーニングシステムの導入など、様々な形での学習支援を提供することで、従業員のスキルアップと業務効率の向上を同時に実現できます。
明確なキャリアパスの提供→ベトナム人労働者は自身の成長と将来性を重視するため、明確なキャリアパスの提示が重要です。技能レベルの段階的な向上目標、昇進のための具体的な条件、研修や資格取得の機会など、長期的な成長の道筋を示すことで、高いモチベーションの維持と優秀な人材の定着を図ることができます。
技能向上と資格取得の支援→特定技能制度における上位資格への挑戦支援や、業界特有の資格取得に向けた研修提供など、従業員の技能向上を積極的に支援することが重要です。これにより、従業員の市場価値向上と企業の生産性向上の両方を実現し、win-winの関係を構築することができます。
まとめ
ベトナム人労働者の採用成功の鍵は、彼らの文化的背景と価値観を深く理解し、それに基づいた適切な職場環境と支援体制を構築することにあります。
ベトナム人の持つ勤勉さ、真面目な勤務態度、チームワークを重視する姿勢、そして高い学習意欲は、適切な環境が整えば企業にとって大きな戦力となります。特に、家族を重視し明確な目標を持って働く彼らの特性は、日本企業の長期的な成長において貴重な人材となり得ます。
一方で、コミュニケーションの課題や文化的な違いから生じる誤解を避けるためには、継続的な理解度確認、公平で透明性のある評価制度、そして文化的配慮に基づいた職場環境の整備が不可欠です。
今後も日本の労働力不足は継続することが予想される中、ベトナム人労働者との良好な関係構築は、企業の持続的成長において重要な戦略的要素となります。特定技能制度や技能実習制度を活用したベトナム人採用を検討されている企業の皆様には、本記事で紹介したポイントを参考に、効果的で長期的な雇用関係の構築を目指していただければと思います。
適切な理解と配慮に基づくベトナム人雇用は、企業の生産性向上と人材の成長の両方を実現する、真の意味でのwin-winの関係を築くことができるでしょう。
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