2019年4月に特定技能制度が始まり、在留資格「特定技能」が創設されました。
外食業分野では、特定技能1号・2号それぞれで外国人の受け入れが可能です。
この記事では、特定技能「外食(外食業)」の対象となる業務や、取得するための要件、特定技能外国人を採用するポイントについて解説します。
1.特定技能「外食」とは?
在留資格「特定技能」では、生産性の向上や国内人材の確保のための取り組みを行っても、なお、人材の確保が困難な状況にある産業分野に限り、
一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人労働者の受け入れが可能です。
その対象分野の一つに、外食業も含まれます。
特定技能「外食」が創設された背景
外⾷業における有効求⼈倍率は、全産業平均に⽐べると⾼く、
農林水産省が発表した「外食業分野における特定技能外国人制度について」のデータをみると、
令和3年時点での 外⾷業を含む「宿泊業、飲⾷サービス業」の⽋員率は、3.8%と⾼⽔準にあり、全産業計(2.6%)の約1.5倍の⽔準となっています。
また外国人材の受け入れ状況によると、外食業で働く外国人材の構成比は留学生などの「資格外活動」が55%と全体の半分以上を占める状況です。
資格外活動には就労時間に制限があるため、日本人と同じように雇用することはできません。
このような背景の中、外食業の人手不足に対応するために、特定技能が外食業に設定されました。
特定技能「外食」の対象業種・雇用形態・任せられる業務・報酬
ここからは特定技能「外食」の概要について解説していきます。
対象事業者
外⾷業分野の特定技能外国⼈を受け⼊れる事業者は、当該外国⼈を飲⾷店、持ち帰り飲⾷サービス業、配達飲⾷サービス業、給⾷事業等の
飲⾷サービス業を⾏っている事業所となっており、比較的幅広い事業所となります。
※ただし風俗業はNG(詳細は後述)
任せられる業務
【外⾷業全般】
「飲⾷物調理」、「接客」、「店舗管理」に主として従事すること
【関連業務】
「原材料として使⽤する農林⽔産物の⽣産」、「店舗における調理品等以外の物品の販売等」に付随的に従事することは差し⽀えないとされています。
デリバリー業務なども可能となっていますが、接客や調理等の業務がないデリバリーのみへの従事や、
風俗営業許可が必要な店舗での業務は認められていません。
雇用形態
特定技能外国⼈の雇⽤は直接雇⽤とし、フルタイムで業務に従事するものとされています。派遣では雇用することができません。
2.特定技能「外食」の人材を受け入れる企業の要件
特定技能の各分野で共通している「所属機関期間(企業)」の要件は、以下の通りです。
所属機関(企業)の基準 ~各分野共通~
- 1.機関自体が適切 であること(例:5年以内に労働関連法・出入国管理法等関係法令の法令違反がない)
- 2.外国人と結ぶ雇用契約が適切であること(例:報酬額が日本人と同等以上)
- 3.外国人を支援する体制(例:外国人が理解できる言語で支援できる)
- 4.支援契約が適切であること(例:生活オリエンテーション等を含む)
所属機関(企業)の基準 ~特に「外食業」分野で課されるもの~
特定技能「外食業」分野の特定技能外国人が所属する機関には、以下の条件が課されます。
- ア.特定技能所属機関は、特定技能外国人に対して、風俗営業法に規定する「接待飲食等営業」を営む営業所において就労を行わせないこと。
- イ.特定技能所属機関は、特定技能外国人に対して、風俗営業法に規定する「接待」を行わせないこと。
- ウ.特定技能所属機関は、農林水産省、関係業界団体、登録支援機関その他の関係者で構成される
- 「食品産業特定技能協議会」(以下「協議会」という。)の構成員になること。
- エ.特定技能所属機関は、協議会に対し、必要な協力を行うこと。
- オ.特定技能所属機関は、農林水産省又はその委託を受けた者が行う調査等に対し、必要な協力を行うこと。
- カ.特定技能所属機関は、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託するに当たっては、協議会の構成員となっており、
かつ、農林水産省及び協議会に対して必要な協力を行う登録支援機関に委託すること。 - キ.特定技能所属機関は、特定技能外国人に対するキャリアアッププランのイメージを予め設定し、
- 雇用契約を締結する前に書面を交付して説明すること。
- ク.特定技能所属機関は、特定技能外国人からの求めに応じ、実務経験を証明する書面を交付すること。
協議会の加入について
特定技能制度の適切な運用を図るため、12分野ごとに所管省庁が設置する機関が協議会です。
特定技能外国人を受け入れられるように、構成員の連携、制度や情報の周知、法令遵守の啓発などを行う役割を担います。
※2024年2月の告示改正以降、特定技能協議会への加入時期が見直され、特定技能所属機関(受入れ企業)が
初めて特定技能外国人を受入れようとする場合には、受入れの前に特定技能協議会に加入することが
義務付けられることになっていますのでご注意ください。
キャリアアッププランについて
特定技能外国人に対しキャリアアッププランのイメージをあらかじめ設定し、
雇用契約を締結する前に書面を交付して説明することが義務付けられました。
キャリアアッププランに関する記事は後日公開予定です。
特定技能外国人の支援について
特定技能外国人に対する支援については、必ず行わなければならない義務的支援と任意的支援がありますが、
これらの支援等に関しては登録支援機関に委託することにより条件を満たすことは可能です。
特定技能「外食」の人材を雇用する際の注意点
所属機関(企業)の要件について
外食分野で特定技能を受け入れる際、所属機関の要件は上記に示しましたが、
特に協議会の加入とキャリアアッププランの設定については特定技能採用時に必要となりますので留意ください。
外国人本人の要件について
外食分野は特に上乗せ要件はありませんので、特定技能の日本語要件をクリアし特定技能外食分野の技能試験合格者であれば受け入れ可能です。
外食業では技能実習がなく(例外的に「医療・福祉施設給食製造職種、医療・福祉施設給食製造」の技能実習2号修了者は特定技能外食に以降可)、
在留外国人で経験者が少ない分野になりますが、留学藤のビザで外食のアルバイト・パート経験がある方は一定数いるので、
国内在留の外国人で経験者を希望する場合は、留学生に絞って募集をかけてみるのも良いかもしれません。
3.特定技能「外食」の外国人側の要件
特定技能の外国人側の要件は次の通りとなります。
特定技能1号外食業 外国人本人の要件 ~各分野共通~
- 1.18歳以上であること
- 2.健康状態が良好であること
- 3.技能試験および日本語試験(N4相当)に合格していること
(技能実習2号を良好に修了した外国人は免除)
特定技能「外食」1号を取得するルート
- ・「外食業特定技能1号技能測定試験」と「日本語能力試験」
- ・技能実習2号を良好に修了し、特定技能1号へ移行するルート
外食業特定技能1号技能測定試験
試験科目は「学科試験」と「実技試験」の2科目70分で行います。
試験の内容は外食業の仕事内容についての技能水準を問うもので、学科試験は外食の業務に必要な日本語能力を、
実技試験は正しい行動の選択と作業計画を立てられるかの能力を測ります。
国内試験は1年通して3回、大まかに1月、5月、10月頃に行われ、試験の2か月ほど前に事前のマイページの申請が必要となります。
海外の試験はフィリピン、インドネシア、ネパール、ミャンマー、カンボジア、タイ、スリランカで実施されており、
2024年12月からベトナムでも始まりました。
申し込みや日程の詳細は「OTAFF 一般社団法人外国人食品産業技能評価機構」のサイトで確認できます。
日本語能力試験
日本語能力試験は「日本語能力試験(N4以上)」または「国際交流基金日本語基礎テスト(A2以上)」のどちらかを受験します。
特定技能「外食」2号の取得要件
特定技能2号は2分野のみでしたが、2023年に拡大し、介護以外の11分野で2号を受け入れが可能となりました。
外食業も特定技能2号の対象です。
特定技能2号外食業 外国人本人の要件
外食業分野において特定技能2号の在留資格で受け入れる外国人は、以下に定める (1)の実務経験を有し、
かつ(2)及び(3)のJLPT・N3試験に合格する必要があります。
- (1)複数のアルバイト従業員や特定技能外国人等を指導・監督しながら接客を含む作業に従事し、
- 店舗管理を補助する者(副店長、サブマネージャー等)としての2年間の実務経験
- (2) 「外食業特定技能2号技能測定試験」
- (3) 「日本語能力試験(JLPT)(N3以上)
4.特定技能「外食」の外国人人材を雇用するまでの流れ
採用の流れは以下の通りです。
- 1.受け入れ要件の確認
- 2.人材募集・面談
- 3.雇用契約を結ぶ
- 4.支援計画を策定する
- 5.在留資格申請を行う
- 6.就業開始
外食業で採用できるその他の在留資格
身分系ビザ
永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者ビザです。
身分系ビザは就労活動に制限がないため雇用する側にとっては一番雇用しやすい外国人です。
留学ビザ・家族滞在ビザ
資格外活動許可を得て週28時間以内で就労が可能です。時間の制限があるためフルタイムの雇用は難しくなります。
「技術・人文知識・国際業務(技人国)」
そもそもの前提として、在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、外国人が日本でホワイトカラーの仕事に従事する為の在留資格です。
「技人国」で雇用できる業務内容には、飲食店を多店舗運営する本社スタッフや会社のマネージャー、スーパーバイザーが挙げられます。
事務や管理職業務での雇用を前提に「技人国」を取得した場合、その業務を行いながら接客や調理の仕事を兼業することはできません。
したがって、マネジメントに関わるとはいえ、店舗で働く店長などでの雇用は実質的には難しいといえます。
「技能」
外国料理の専門店が対象で日本料理店では働けず、調理以外の業務も基本的には従事できないという制限があります。
さらに申請のハードルがかなり高く、10年分の在職証明書が必要になることに加えて、職歴の中身も審査されることから難易度の高いビザとなります。
「特定活動46号」
日本の大学を卒業した高い日本語能力を持つ外国人留学生が、日本で就職するための在留資格が「特定活動46号」です。
飲食業、製造業、小売業、ホテル・旅館業、タクシー業、介護業などの職業が該当し、「技人国」よりも幅広い業務が認められています。
しかし、「特定活動46号」を取得するためには、日本の4年制大学・大学院を卒業していることのほか、
日本語能力検定N1かBJTビジネス日本語能力テスト480点以上をクリアしていること、
もしくは大学・大学院において「日本語」を専攻して大学を卒業したことが必須条件となっています。
技能実習「外食」
外食業については、技能実習制度の対象とはなっていません。
しかし、「医療・福祉施設給食製造職種、医療・福祉施設給食製造の3年間の第2号技能実習まで修了した外国人は、
業務で必要となる根幹に関連性がある」ということで、外食業において働くことができます。
その場合、「技能測定試験」及び「日本語試験」は免除されます。
7.まとめ
特定技能「外食」の概要、雇用する際の手順・注意事項を中心にまとめました。
要件や手続きが複雑でよくわからない、という場合は是非Stepjobまでお問合せください。
また特定技能以外の身分系ビザ、留学生のアルバイトなども斡旋可能です。