2024年義務化!認知症介護基礎研修

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認知症介護基礎研修が義務化されることに伴い、2024年4月以降、無資格で介護職に従事している人は研修を受けていないとほとんどの介護事業所で働けなくなります。
ここでは、認知症介護基礎研修の概要や受講対象者、さらには免除されるケースなどについて解説します。

 

認知症介護基礎研修とは

認知症介護基礎研修とは、認知症ケアに携わるうえで必要な基礎的知識・技術・考え方などを習得することを目的とした研修です。2015に策定された「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」に基づき、介護職員のベースアップを図るため、2016年度から全国的に始まりました。

2024年度から無資格の介護職員の受講が義務化

2021年4月の介護報酬改定に伴い、無資格で認知症ケアに携わる介護職員に対し、認知症介護基礎研修の受講が義務付けられました。2021年4月から2024年3月末までの期間は経過措置として未受講でも働くことができましたが、2024年4月以降は受講していないと働くことができなくなります。なお、新たに入る職員(新卒・中途を問わない)が受講の対象となる場合は、入職後1年以内に受講させる必要があります。

認知症介護基礎研修の位置づけ

認知症介護研修にはいくつかのカテゴリーがあり、認知症介護基礎研修は介護初任者が認知症ケアを学ぶための入門的位置づけとなっています。受講期間は一日で修了できます。

参照:「認知症介護実践者等養成事業」|認知症介護研究・研修センター

認知症介護基礎研修では認知症を取り巻く環境、具体的な介護の考え方をしっかりと学び、基礎的な正しい介護方法を身につけ、サービス提供ができるようになることを目指していきます。

 

認知症介護基礎研修の受講対象者

認知症介護基礎研修の受講対象者は、すべての介護サービス事業所において、介護に直接携わる無資格の職員です(福祉用具貸与、居宅介護支援を除く)。

受講が免除される人

保持している資格や受講した研修などの過程において、認知症ケアに関する基礎的な知識及び技術を習得している人は受講が免除されます。

【免除される資格・研修】

<資格>
医師、歯科医師、歯科衛生士、薬剤師、看護師、准看護師、介護福祉士、介護支援専門員、社会福祉士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、
精神保健福祉士、管理栄養士、栄養士、あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師、柔道整復師など
<研修>
実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者、生活援助従事者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、訪問介護員養成研修一級課程・二級課程修了者、
認知症介護実践者研修修了者、認知症介護実践者リーダー研修修了者、認知症介護指導者養成研修修了者など

ほかにも以下のような場合でも免除されます。

・福祉系高校で認知症に関する科目を受講しており、その高校を卒業を卒業証明書により証明できる者
・養成施設の卒業証明書及び履修科目証明書により、認知症に関する科目を受講していることが確認できる者
・人員配置基準上、従業員数として算定される従業者以外の者や、直接介護に携わる可能性がない者

ただし、認知症サポーター等の民間資格(認知症サポーター養成講座、認知症ケア指導管理士など)や社会福祉主事の任用資格については、免除の対象外となります。
ご注意ください。

特定技能、技能実習生などの外国人は受講義務がある

外国人については、EPA介護福祉士、在留資格「介護」等の医療・福祉関係の有資格者を除いては受講対象者となります。
特定技能、技能実習生は受講対象者となりますので、注意が必要です。
※受講する際のテキストについてもN4レベルを基準とした補助教材が作成される予定。

 

認知症介護基礎研修を受講するには?

受講方法

認知症介護基礎研修の受講方法は、eラーニングまたは対面(オンライン配信を含む)による集合型研修で実施されるのが主流です。この研修は、各自治体が指定した実施団体での受講となりますので、受講する自治体のホームページなどで情報を確認する必要があります。
申込手続きは、働いている介護保険施設や事業所の代表を通じて、研修の実施団体宛に行います。こちらも該当する自治体のホームページなどで確認ください。

受講にかかる時間

認知症介護基礎研修は、1日で修了できるカリキュラムです。
eラーニングの場合、動画視聴時間は約150分。視聴後に復習のための確認テストを行います。
対面(オンライン配信を含む)による集合型研修の場合は講義3時間、演習3時間の合計6時間で行われます。

受講費用

受講する自治体(実施団体)により異なりますが、3,000円~5,000円程度のところが多いようです。
勤務先の判断により、支払いが受講者本人になる可能性もあります。あらかじめ確認しておきましょう。

介護職員初任者研修との違い

介護職員初任者研修は、認知症ケアも含めた幅広い介護業務において、必要最低限の知識、技術、考え方を習得するための研修です。学習範囲が広く、受講時間は約130時間(約1ヶ月)を要します。
認知症介護基礎研修は全員必須であることから、学習範囲を限定し、一日で修了できる点が大きな違いです。

研修カリキュラム

多くの自治体で採用しているeラーニング研修のカリキュラムの一例をご紹介します。

序章:認知症を取り巻く現状
・わが国の認知症施策の動向(認知症施策推進大綱の概要)

第1章:認知症ケアにおいて基礎となる理念や考え方
・パーソン・センタード・ケア
・認知症の人への偏見・誤解とその解消
・介護者の視点
・認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援とは

第2章:認知症の定義と原因疾患
・認知症とはなにか
・認知症の原因疾患:アルツハイマー型認知症の原因と主要な症状
・血管性認知症の原因と主要な症状
・レビー小体型認知症の原因と主要な症状
・前頭側頭型認知症の原因と主要な症状

第3章:認知症の中核症状と行動・心理症状の理解
・認知症の中核症状と行動・心理症状の理解
・中核症状の生活への影響
・中核症状が心理面に与える影響
・行動・心理症状のとらえ方と出現原因
・認知症の人にとっての環境
・健康管理

第4章:認知症ケアの基礎技術
・認知症の治療
・認知症の人の適切な関わり方
・認知症の症状への対応
・意思を尊重する支援方法とは
・チームケアの基本
・家族介護者の理解と支援方法

参照:認知症介護基礎研修eラーニングの学習内容|社会福祉法人東北福祉会 認知症介護研究・研修仙台センター

研修カリキュラムの構成は序章は動画のみ、第1章から第4章は動画を視聴し、その後復習問題、確認テストが実施されます。すべての章に合格すると修了証書が発行されます。

 

最後に

内閣府が2023年に発表した高齢社会白書によると、令和4年10月1日現在、総人口に占める 65歳以上人口の割合は 3.4人に1人となっています。2070年には2.6人に1人が65歳以上となると推計されており、認知症ケアへの対策はますます重要になってきます。認知症に関する知識やスキルを身に着けることは、認知症ケアにとっては必要不可欠です。積極的に研修を受講することで、基礎をしっかり身につけ、利用者が安心して介護を受けられる体制ができるようにしていきましょう。

 

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